2012 Fiscal Year Research-status Report
ケーブル・イン・コンジット導体への捩り付加による超伝導特性改善の原理実証
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23561004
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
今川 信作 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (10232604)
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Keywords | 超伝導 / ねじりひずみ / ケーブル・イン・コンジット導体 |
Research Abstract |
超伝導線を模擬する高抵抗線を検討した結果,機械的特性が銅に近い方が望ましいと判断して,銅合金系の中では高い抵抗率を有するホルマール絶縁マンガニン線を選択した。標準のひずみ計測器を利用して所定の測定精度を確保するためには,各々の抵抗値を120オーム以上とすることが必要である。そのため,細いマンガニン線を折り返して束ねることにより120オーム以上の抵抗値を得る方式を発案した。束ねた直径が超伝導素線の直径と同じ1 mm程度となるように,線径0.18 mm(ホルマール絶縁線径0.211 mm)のマンガニン線を14本束ねる設計とし,120オームを確保するため模擬導体の長さを0.5 mとした。模擬導体の中心には冷却チャンネルを模擬して直径6 mmのステンレス配管を配置し,その回りに3本撚り×4の撚線6セットを0.2 m程度のピッチで巻き付けてコンジットに挿入する設計とした。コンジット材には10A-Sch40と10A-Sch10Sの2通りのステンレス配管を用意し,各々,超伝導素線を模擬する線径0.90 mmと1.00 mmの銅線と前記の束ねたマンガニン線を撚り合わせた撚線を40%以下のボイド率(断面内の空隙の割合)となるように挿入する計画であり,その加工法を検討するための試作を開始した。 並行して,上記のコンジットを模擬するステンレス配管に所定の捩りを加える拘束治具の設計を完成し,発注した。回転機構にはウォームギアとウォームホイールを採用し,長手方向の圧縮・引張ひずみを開放するため,キーとキー溝によるスライド機構を設ける設計とした。4月に入荷予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
核融合装置用の超伝導マグネットには大電流導体が必要であるため,Nb3Snなどの超伝導線材を多重に撚り合せたバンドル導体を金属ジャケットに収納したケーブル・イン・コンジット導体が実用化されている。本研究の目的は,このケーブル・イン・コンジット導体において,高温での生成熱処理からの冷却過程で生じる残留圧縮ひずみをコンジットに捩りを加えることにより軽減し,超伝導特性を改善する方法を原理実証することである。そのため,超伝導線材と同等の機械特性を持つ高抵抗線を模擬導体としてケーブル・イン・コンジット導体を作成し,その抵抗変化から線材の平均ひずみの変化を調べる計画である。1年目にケーブル・イン・コンジット導体を製作し,2年目に捩り実験を行うことを計画していたが,最適な材料選定とひずみ計測の原理実証および試験治具の設計に多くの時間を費やしたために,遅れが生じている。サンプルの材料は1月に入荷して製作に着手しており,実験に必要な治具は3年目の初めに揃うので,遅れは挽回できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ボイド率の異なる2種類の模擬導体を完成させ,捩りを印加する治具に取り付けて実験を行う。模擬導体のコンジット長手方向に弾性範囲内で圧縮と引張荷重を加え,その際のひずみゲージと撚線抵抗値の変化を調べることにより,端部で撚線がコンジットにしっかりと固定されていることとひずみゲージや撚線抵抗計測の健全性を確認する。続いて,コンジット端部フランジの片側を回転させることによりコンジットを捩り,その際のひずみゲージと各撚線の抵抗値の変化を測定し,回転角度と撚線に生じるひずみの関係を調べる計画である。実験結果の分析と有限要素法を用いた構造解析を進めることにより,コンジットの捩り角と超伝導撚線の平均ひずみの因果関係を明らかにする。さらに,この研究成果を実際のケーブル・イン・コンジット導体へ適用する方法について,コイル巻線方法と合わせて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最適な材料選定とひずみ計測の原理実証および試験治具の設計に多くの時間を費やし,試験治具が年度内に完成しなかったため繰り越しが生じた。次年度の研究費は,試験治具の製作費および実験消耗品の購入および成果報告のための出張費等に使用する計画である。
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