2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570001
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岸 努 日本大学, 工学部, 准教授 (80260024)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 細胞周期 / ユビキチンリガーゼ |
Research Abstract |
S期開始を制御するユビキチンリガーゼSCFCdc4がM期も制御するということが、1994年に遺伝学的に示された。それ以降現在に至るまで、分子機構は明らかになっていない。 申請者は、自身で開発したユビキチン化の基質を同定する手法を用いて、SCFCdc4によるM期の制御が、G1期に機能する転写因子Swi5のユビキチン化・分解を介していることを、出芽酵母を用いて明らかにした。本研究ではSwi5がM期進行を阻害する因子の発現を誘導するという作業仮説を実証し、SCFCdc4に依存したSwi5の分解が持つM期制御における役割を解明することを目的として、研究を行った。 ユビキチン化を受けずに安定化する安定化型Swi5を発現する細胞を作製し、細胞周期の進行を調べた結果、染色体の分配とM期終了が阻害されることを明らかにした。Swi5は転写因子であるので、Swi5に依存して転写される因子に、染色体分離・M期終了を阻害する因子X・Yが存在することが示唆された。実際に、この因子X・Yを同定した。Xの破壊株では染色体分配が回復した。またYの破壊株ではM期終了が回復した。 以上のことから、SCFCdc4はSwi5の分解を介して、染色体分配・M期終了を制御していること、そしてそれは、Swi5に依存して転写されるXとYの転写抑制を介していることが明らかとなった。この発見は、S期開始を制御するユビキチンリガーゼSCFCdc4がM期も制御することを説明できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、おおむね順調に進んでいる。 まず、見込み通りSwi5に依存して転写される因子の中から、染色体分離とM期終了を阻害する因子を同定することに成功した。Swi5に依存して転写される遺伝子の中からすでに細胞周期で機能することが知られている遺伝子群を選び、これらの破壊株を作製した。安定化型Swi5を発現したところ、染色体分離あるいはM期終了が回復する破壊株を分離することができた。逆に、この遺伝子(XあるいはY)を過剰発現すると、染色体分離あるいはM期終了が阻害された。また安定化型Swi5を発現する細胞では、X・Yの転写量および発現量が著しく増大した。これらの結果は、Swi5に依存して転写されるX・Yが、染色体分離とM期終了を阻害する因子であることが示唆される。 次にX・Yが、染色体分離とM期終了を阻害する作用機序に関して、X・Yが、それぞれ、チェックポイント経路、M期終了ネットワークを制御していることを遺伝的に示した。これらの点に関しては、ほぼ予想通りの結果が得られた。 さらに、Swi5の分解がG1期に起きる理由を解明した。Swi5の分解がリン酸化に依存することを見いだし、このリン酸化がG1期に起きることを示した。当初の予定ではSwi5をリン酸化するキナーゼも同定する予定であったが、これに関しては未解決として翌年に持ち越すこととなった。この理由の一つとして、Swi5をユビキチン化に導くキナーゼが、当初予想していた1種類ではなく、2種類以上あることが原因であると思われる。すなわち、Swi5をリン酸化するキナーゼとしてSrb10を同定したが、srb10破壊株でSwi5は安定化するものの、その程度は、安定化型Swi5には及ばなかった。Srb10以外のキナーゼの同定は、翌年度に解明する。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) Swi5を分解に導くキナーゼで、Srb10以外のキナーゼを同定する。Swi5によって転写される遺伝子のなかにキナーゼをコードするものが複数存在するので、これらのキナーゼによるフィードバック制御の可能性を検討する。具体的には、破壊株を作製し、Swi5が安定化するものを分離する。(2)染色体分離、核分裂が、X・Yの翻訳後修飾によって制御されている可能性を検討する。まず、リン酸化による制御を受ける可能性を検討する。具体的には、X・Yのリン酸化・脱リン酸化が周期的に起きているか調べる。起きている場合には、キナーゼやフォスファターゼを遺伝学的に同定する。次に、ユビキチン化による制御を受ける可能性を検討する。プロテアソームの阻害剤を培地に添加したときにX・Yが安定化されるか調べる。安定化される場合は、X・Yのユビキチン化を行うユビキチンリガーゼを遺伝学的に同定し、ユビキチン化機構を解明する。(3) X・Yによる染色体分離、核分裂の制御の持つ生理的意味を解明する。G1期を安定に維持することができないと、G1期が短くなる、接合フェロモンによる細胞周期G1期停止ができなくなる、さらにはpre-matureに細胞周期が進行し染色体の安定性が低下するなどの障害が起きることが予想される。そこでX・Yの単独変異株、二重変異株を作製して、野生株と変異株の同調培養を行い、G1期の長さをフローサイトメーターを用いて測定し、比較する。また、接合フェロモンによる細胞周期G1期停止の効率と染色体の安定性を遺伝学的に調べる。接合フェロモンやDNAに損傷を与える薬剤に対する感受性を、野生株と変異株を用いて比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は消耗品に当てる。日本分子生物学会へ参加・発表と、東京工業大学生命理工研究科との研究打ち合わせのために旅費を使用する。
|
Research Products
(1 results)