2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570001
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岸 努 日本大学, 工学部, 准教授 (80260024)
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Keywords | 細胞周期 / ユビキチンリガーゼ / 転写制御 / フィードバック阻害 |
Research Abstract |
前年度の成果を受け、本年度は以下の課題に取り組んだ。 (1) SCFによるSwi5の分解を誘導するキナーゼの同定: Swi5はM期後期に核に移行し転写因子として機能する一方で、核内では急速に分解される。Swi5によって転写される因子の中にキナーゼのサブユニットが存在することから、このキナーゼによるフィードバック阻害の可能性を検討した。その結果、Swi5の分解がCDKの一つであるPho85キナーゼに依存することを明らかにした。 (2) 安定化型Swi5の発現による染色体分離の阻害機構の解明: 安定化型Swi5の発現により染色体分離が遅延することを昨年度に示した。この染色体分配の阻害が紡錘体チェックポイントを制御するMAD2遺伝子の破壊株では回復することを明らかにした。さらに、M期サイクリンを過剰発現することによっても、染色体分離の阻害が回復した。したがって、Swi5はMad2とM期サイクリン-CDKを介して染色体分離を制御していることを明らかにした。 (3) 安定化型Swi5の発現による染色体分離の阻害機構の解明: 安定化型Swi5の発現によりM期終了が遅延することを昨年度に示した。さらにこの遅延の原因として、Swi5によって転写される遺伝子の中からYを明らかにした。本年度はこのYの不活性化機構の解明に取り組んだ。ユビキチン化によって分解されるという作業仮説を立て、検証した。その結果、Yはプロテアソームによって分解されることを示した。ユビキチンリガーゼを同定するために、細胞周期を制御するSCFユビキチンリガーゼを構成するCdc53の変異株で、Yが安定化することを示した。以上のことから、YはSCFユンビキチンリガーゼによって分解されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Swi5の分解機構について、当初考えていたとおり、フィードバック阻害によることを示すことができた。 また、昨年度の計画の通り、安定化型Swi5が、紡錘体チェックポイントを介して染色体分離を阻害することを明らかにした。さらに、この制御にCDKの活性も関与していることを示した。 安定化型Swi5によるM期制御では、すでにSwi5によって転写される因子がM期終了を阻害することを明らかにしていたが、この因子がプロテアソームによって制御されることを明らかにし、このときのユビキチン化にSCFユビキチンリガーゼが関与することを示唆する結果を得た。 以上の通り、当初の研究計画通り、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 安定化型Swi5による染色体分離の阻害機構の解明: 本年度、この制御にMad2とCdkが関与していることを示した。そこで、Cdkによるリン酸化に基質を探索し、Mad2チェクポイントの制御におけるCDKの役割を明らかにする。さらに、Swi5によって転写される遺伝子で染色体分離を阻害するXが、Mad2とCdkによるチェックポイント制御にどのように関わるのかについても明らかにする。 (2) 安定化型Swi5によるM期終了の阻害機構の解明: 本年度の成果を受け、Yのユビキチン化機構を解明する。YがSCFユビキチンリガーゼによって分解されることが本年度の研究から明らかとなった。そこで、SCFによるユビキチン化でYを識別するF-boxタンパク質の同定を行う。F-boxタンパク質遺伝子の変異株のなかから、Yが安定化されるものを分離することによって行う。 (3) Swi5による染色体分離・M期終了の制御の持つ生物学的意味の解明: XとYの二重変異株を作製し、染色体の安定性、染色体分離を阻害する薬剤に対する感受性、DNAに損傷を与える薬剤、さらには接合フェロモンに対するG1期停止について、野生株、単独破壊株を比較する。 (4) これまでの研究から、以下のことが想定される。Swi5は阻害因子の転写を活性化し、染色体分離、核分裂をブロックする。逆に、SCFは Swi5を分解することによって阻害因子の発現を抑制し、その結果、G1期に確立した細胞周期進行のブロックが解除され、細胞周期の円滑な進行が回復する。この作業仮説を検証し、Swi5がG1期を維持するためのマスター・レギュレーターとしての性質を持つことを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分を消耗品に当てる。 日本遺伝学会への参加・発表と東京工業大学との研究打ち合わせのために旅費を使用する。
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