2012 Fiscal Year Research-status Report
海の上を飛ぶコウモリー流氷南限海域で発見された新たな生態
Project/Area Number |
23570014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河合 久仁子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 研究員 (60451415)
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Keywords | 国際情報交流(ロシア) / 安定同位体比解析 / DNA解析 / 進化生態 / コウモリ類 |
Research Abstract |
本研究はモモジロコウモリMyotis macrodactylusが知床半島~北方四島にかけての海上を飛翔し採餌行動をおこなっているという知見に対し、詳細な調査をおこなうことによって海上のコウモリの生態について明らかにし、知床海域での適応的意義を考察することを目的としている。 昨年度に引き続き、海上で飛翔行動の詳細を調査するため、船を用いて海上でのエコロケーションコールの録音をおこなった。現在は音声の解析を行っている。根室海峡を飛翔する個体はどこから飛来するのか、また、知床半島と北方四島間での頻繁な個体の移動があるのかどうかを明らかにするため、知床半島、海上、国後島および択捉島においてのべ300個体以上を捕獲し、標識を装着して放逐した。また、これまで詳細なコウモリ調査が行われたことがなかった択捉島において調査を実施し、モモジロコウモリが生息していないことを確認した。この結果、海峡が本種の分布になんらかの影響を及ぼしている可能性が考えられた。現在のところ、知床半島および国後島間での直接的な個体の移動は確認されていないが、今年度も標識調査を継続して、個体の直接的な移動の有無を調査する予定である。また、知床半島および国後島の個体群間でどの程度遺伝的隔離が進んでいるかを評価することを目的とし、得られた飛膜よりDNA抽出を行いミトコンドリアDNAのCytb遺伝子の塩基配列決定を行った。現在集団遺伝学的解析をすすめているところである。捕獲調査によって得られた体毛中の安定同位体比解析は、連携研究員の中下留美子氏がおこなった。また、より確実にコウモリの餌動物に対する海洋生態系の影響を評価するため、コウモリの餌資源の影響が体毛の安定同位体比に反映されるまでにどの程度の時間がかかるのかを明らかにすることを目的とした飼育実験もおこない、これについても連携研究員の中下留美子氏が解析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
知床半島および国後島での捕獲調査および新たにおこなった飼育実験についても成果が得られた。安定同位体解析およびDNA解析についても、一定程度の成果が得られており、当初の計画の7割以上を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度より始めた飼育実験については今年度も引き続きおこない、データの確実性を高める予定である。また、知床半島および国後島における標識再捕獲調査はできるかぎり継続予定である。安定同位体比解析およびDNA解析に着いては、これまで得られたデータをとりまとめて発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに必要な機材のおおむねをそろえることができたので、今年度は捕獲調査および飼育実験に対して人件費および旅費等に研究費を割く予定である。また、安定同比体比解析およびDNA解析に関わる消耗品の購入を予定している。また、結果発表に関する予算も確保する予定である。
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Research Products
(4 results)