2011 Fiscal Year Research-status Report
水生ガガンボ類の幼生期解明と環境指標生物としての利用
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23570104
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中村 剛之 弘前大学, 白神自然環境研究所, 准教授 (00526486)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 種多様性 / 水生昆虫 / 幼虫 / 双翅目 |
Research Abstract |
青森、秋田両県にまたがる白神山地とその周辺において、水生ガガンボ類の幼虫の観察が容易なサンプリングサイトの選定を行い、河川環境(青森県西目屋村岩木川支流、鯵ヶ沢町赤石川)、湿地的環境(西目屋村の休耕田やミズバショウ発生地など)などの数カ所で幼虫と生息環境の調査を開始した。これらの場所から得られた幼虫を1種につき数個体ずつ研究室に持ち帰り、水温等を整えた飼育ケースで飼育を開始した。湿地性で土中の有機物を食べる種は飼育が比較的容易なものの、流水性あるいは捕食性の種については飼育条件、餌などが当初想定していた以上に限定され、飼育が困難であることも分かってきた。 滋賀県立琵琶湖博物館、栃木県立博物館に収蔵されているガガンボ類の幼虫標本の調査を行った。河川などの環境調査で得られた多くの標本が未同定のままになっており、生物の種多様性を明らかにするための本研究の役割を再確認した。これらの博物館資料を本研究で活用することと今後の調査で得られた幼虫を本研究のために提供してもらうことに快諾を得た。 また、調査結果の学会誌への報告は24年度以降を予定していたが、これを前倒しし、水生生物の生息環境として特異な樹洞等の水溜まりに限って発生するジェーンアシワガガンボについて形態記載を行った。この内容はActa Dipterologica誌に投稿し、受理された。この発表により、すでに知られている同属別種との比較が可能となり、アシワガガンボ属の特徴と種間の差異が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンプリングサイトの設定やデータ収集は順調に開始されたものの、調査初年度であったため春から初夏に出現するガガンボ類の幼虫確保が間に合わなかった。飼育するのが初めての種がほとんどであり、野外で何を食しているかも分からない手探りの飼育であること、さらに、流水性、捕食性の幼虫は研究室内での飼育が特に難しく、初年度に幼生期の形態が解明できたのは6種に留まった。 現在、約20種の幼虫の飼育を継続しており、初夏にかけてこれらが成虫となることで種の特定ができるものと期待している。流水性の昆虫に対しては飼育ケース内の溶存酸素量を増やす工夫、また、室内での飼育が困難な場合については野外での飼育も検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は白神山地を中心とした北東北での調査に限られていたので、2年目以降は九州、中部山岳地帯、北海道など他の地域でのサンプリングを行い、できるだけ広範な環境に生息する多様な分類群の幼虫の飼育につとめる。幼虫の飼育が困難な場合には、DNAの塩基配列を成虫の配列と比較することによる同定も試みる。水質等の環境条件のデータ、標本の収集に力を入れる。 流水性の幼虫を飼育することが困難であったため、この課題克服のために弘前大学白神自然環境研究所付属白神自然観察園内の沼沢に飼育ケースを設置するなどして、野外飼育を試みる。 研究成果は学会での口頭発表や学術誌をとおして積極的に公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越して使用する研究費はない。平成24年度予定している研究費の使用計画は以下の通り。 物品費 300千円(飼育ケース、採集道具、DNA塩基配列調査のための薬品、消耗品など) 旅 費 450千円(調査採集、学会参加費など) 人件費 150千円(飼育補助など)
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Research Products
(2 results)