2012 Fiscal Year Research-status Report
水生ガガンボ類の幼生期解明と環境指標生物としての利用
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23570104
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中村 剛之 弘前大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00526486)
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Keywords | 種多様性 / 水生昆虫 / 幼虫 / 双翅目 / 環境指標 |
Research Abstract |
青森県、秋田県にまたがる白神山地とその周辺で前年度設定したサンプリングサイト、および群馬県尾瀬ケ原湿原において、確認種数を増やすため水生ガガンボ類の幼虫の採集を行いデータの収集を行った。調査した環境は河川(上流から下流にかけて、小沢)、河川周辺の水溜まり、沼沢、湿地(水田、休耕田を含む)、清水の流れ出る崖、小規模な滝の周辺、木のくぼみに出来た水溜まりなどである。採集したサンプルは研究室で飼育し、一部を標本作製と形態の観察と記載のために解剖を行った。また、栃木県立博物館、滋賀県立琵琶湖博物館から提供を受けた水生ガガンボ類の標本の調査を開始している。これらの標本の調査は種の特定は困難であるが、属あるいは亜属程度の特定が可能なことから、幼生期の形態の概要を知る上で重要な情報が得られる。 これまでの成果で特筆すべきものとして、早春の尾瀬湿原で雪の中に這い入るガガンボ類幼虫の種が特定できたことが挙げられる。これらの幼虫は活動する昆虫が少ない雪解けの時期には鳥類の貴重な餌資源となっており、物質循環の重要な役割を果たしている。また、これまで幼虫が知られていなかった亜属に属するTipula (Emodotipula) shogunの幼生期(幼虫および蛹)の形態と生活環境が解明できたことも重要である。Tipula属の系統分類にも形態学、生態学の面から寄与するものである。 この年度の研究成果の一部は日本昆虫学会大会などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成虫まで飼育することで種の特定が出来た種数が予定通りに増えていない。流水に住む捕食性種の飼育方法(特に餌の種類や与え方)が前年度同様確立出来ていない点が大きく影響している。また、この年は韓国において国際昆虫学会議(ICE2012)が行われ、参加を予定していたが、ガガンボ類研究者がほとんど参加しないことが事前に分かっていたため参加を見合わせた。
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Strategy for Future Research Activity |
九州、中部山岳地帯、北海道などサンプリングを行う地域を広げ、多様な環境に生息する分類群の幼虫の飼育につとめる。幼虫の飼育が困難な場合には、DNAの塩基配列を成虫の配列と比較することによる同定も試みる。水質等の環境条件のデータ、標本の収集に力を入れる。 流水性の幼虫を飼育することが困難であったため、飼育方法の改善を試みる。 研究成果は学会での口頭発表や学術誌をとおして積極的に公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越して使用する研究費はない。平成25年度に予定している研究費の使用計画は以下の通り。 物品費 190千円(飼育ケース、DNA塩基配列調査や水質調査のための薬品、消耗品など) 旅 費 350千円(調査採集、資料調査) 人件費 60千円(飼育補助など)
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Research Products
(2 results)