2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞内膜輸送における低分子量GTPase ARFとRabのクロストーク
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23570162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
申 惠媛 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 助教 (10345598)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞 / タンパク質 |
Research Abstract |
細胞内タンパク質輸送は輸送小胞を介して行われ、小胞の形成・運搬・融合の各過程は特定の分子群により制御されている。低分子量GTPaseのARFは輸送小胞の形成に、Rabは主に輸送小胞のターゲティングや融合を調節する。近年応募者は、ARF1のエフェクターがRab14とも結合することを見出した。本研究ではTGN以降の輸送経路におけるARF1とRab14間のクロストークの分子機構を明らかにすることを目的とする。当該年度では、ARF1とARF3のエンドソームでの局在や機能を明らかにした。これまでに、5種類のヒトのARFのうち、ARF1、ARF3、ARF4、ARF5は主にゴルジ体に局在していることが知られていた。本研究ではARF1とARF3の発現抑制とタイムラプスイメージング法を組み合わせることでARF1とARF3がエンドソームに局在することを初めて明らかにした。さらにARF1とARF3を同時に発現抑制した細胞ではエンドソームの形態が点状からTubule状に変化し、トランスフェリンのこのエンドソームから細胞膜へのリサイクリングが遅延することを見出した。一方、ARF1とARF3を発現抑制そた細胞では、このエンドソームからゴルジ体への輸送には影響を及ぼさなかった。さらに、ARF1とARF4を同時を発現抑制した細胞でもエンドソームのTubule化が観察されたが、トランスフェリンのリサイクリング経路は正常であった。これはARF1とARF3、ARF1とARF4の異なるペアーのARFタンパク質がエンドソームを経由する異なる輸送経路を制御していることを示唆し、ARFの輸送経路の制御における新しい分子メカニズムを示唆するものである。この異なるARFのペアーとRabタンパク質とのクロストークのメカニズムを明らかにすることは、小胞輸送経路の理解をより進展させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はエンドソームに局在するRab14タンパク質とARFタンパク質のクロストークのメカニズムを明らかにすることである。当該年度の研究により、これまでにゴルジ体に局在すると知られていたARF1とARF3のエンドソームでの機能について新たな知見を得ることができた。本研究により、ARF1とARF3がゴルジ体のみならずエンドソームに局在することを初めて明らかにした。内在性のARFを認識する抗体の不在、発現させたARFは細胞質に存在するプールが多いため、エンドソームでの局在はこれまでに知られてこなかった。本研究では、ARF1とARF3をそれぞれ発現抑制した細胞に蛍光タンパク質を付加したARF1とARF3を発現させ、ライブセルイメージング法を用いることで、エンドソームへの局在を明らかにすることができた。さらに、ARF1とARF3が補償的にエンドソームの形態維持やエンドソームから細胞膜への輸送を調節していることを明らかにした。一方、ARF1とARF4も補償的にエンドソームの形態維持に必要であることを見出したが、エンドソームから細胞膜への輸送には必要でないことが分かった。この成果は、エンドソームに局在するARFとRabに間の機能的リンクを調べる上、大変ポジティブな進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究により、ARF1とARF3、ARF1とARF4がそれぞれのペアーが補償的にエンドソームの形態維持に関与するが、ARF1とARF3はトランスフェリンのリサイクリング経路に関与し、ARF1とARF4はその経路には関与しないことを見出した。今後、1) ARF1とARF4が特異的に関与する輸送経路を明らかにしていく。さらに、2) 異なるペアーのARFが異なる輸送経路をどのようにして制御しているのか、その分子機構を明らかにしていく。また、3) その制御過程においてRabタンパク質と共有するエフェクタータンパク質がどのような調節機能を果たしているのかを明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究において、以下の経費以外はすべて研究試薬、研究器具等の購入に使用する予定である。(論文投稿費として20万円、研究打ち合わせや学会での研究成果発表の旅費として10万円、その他の費用として5万円。)
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