2011 Fiscal Year Research-status Report
PASドメインタンパク質の相互作用多様化機構の解析
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23570194
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 洋一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (40332770)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 情報伝達 / 光受容 / タンパク質間相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、PASドメインタンパク質PYPと相互作用タンパク質の結合部位の解明と、相互作用に必要なタンパク質構造変化を抽出してPASドメイン全般における情報伝達機構の検討を行う。そこで本研究では、(1)PYP-相互作用蛋白質の結合に関わる直接的なインターフェース部位の抽出と、(2)相互作用を引き起こすPYPのタンパク質構造変化様式を明らかにする。さらに、(3)相互作用分子の結合領域の特異性を明らかにする。これらのことから、PASドメインにみられる、多様な性質が共通の構造変化様式の上に階層的に形成されているのか、全く異なる構造変化様式の上に成り立っているのかを明らかにしていく。多様な性質を生む機構が情報伝達過程のどの階層で実現されているかを議論する。23年度は、(1)相互作用タンパク質の溶液中での会合状態とその形状を、X線小角散乱測定を用いて決定した。その結果、PYP相互作用タンパク質は溶液中で異方的な2量体を形成していることが明らかになった。さらに、PYPとの光依存的に形成される複合体の溶液構造を測定し、多様な複合体構造中、最大になる複合体にリング状構造を見出した。この結果は、PYPにおける相互作用の状態を初めて示したものである。また、(2)PYPに対するキメラタンパク質の相互作用能の検証から、N,C末端を保持したキメラに一定の相互作用能が維持されることを見いだし、両末端に依存した構造変化が相互作用に必須であることが示唆された。さらに、構造不安定性のため結晶化が困難であったRcPYPの結晶化についても、微細結晶が晶出する条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、(1)相互作用タンパク質の溶液構造の決定と複合体形成時の溶液構造の決定、(2)複合体形成を生む相互作用領域の決定であった。(1)の計画については、当初想定していた結果に加えて、複合体の特異な形状に依存した構造モデルの構築にまで至り、十分に達成されていると考えられる。(2)の計画については、キメラPYPを用いた解析から相互作用に関与するタンパク質の領域を示唆できたが、各種のキメラタンパク質の解析から、PYPの相互作用が一部のタンパク質領域のみで単純にON/OFFされているものでないことが明らかになった。キメラタンパク質の相互作用能のみに依存した解析に加えて、より詳細な物理化学的な物性の検討を必要としている点で、次年度以降にも解析が必要である。また、当初計画に加え、現在まで結晶化できていなかったRcPYPの晶出に成功した。構造解析への道筋を開いたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に明らかになった光依存的PYP複合体構造の形成要因をPYP分子内の残基レベルで明らかにして、相互作用のON/OFFを決定する構造変化の素過程が議論していく。この目的のため、23年度に続きキメラPYPを用いた、相互作用条件を満たす構造や構造変化様式を二次構造、溶液構造解析から明らかにしていく。さらに、より詳細な議論を進めていくために、部位特異的な変異体解析を進めていく。また、相互作用タンパク質についても、相互作用部位の決定を目指した、変異体解析を進めていく。以上の結果の議論には、詳細な立体構造情報が必要になっていくが、現在のところ、RcPYP、相互作用タンパク質ともに立体構造は得られていない。そこで、23年度に得られたRcPYPの晶出条件を最適化していき、X線結晶構造解析へとつなげていく。さらに、相互作用タンパク質についても結晶化条件を探索していく。これらの情報をもとに、すでに多く蓄積されたPYPの構造変化の詳細な知見と、さらに、PASドメイン一般の相互作用様式を検討して、本研究課題の目的であるPASドメインにおける多様性を生むメカニズムを議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は、当初予定していた培養器の申請時からの価格下落に伴う余剰と、結晶化条件の探索が予定よりうまくいったことに伴う結晶化試薬の経費によって、次年度以降に使用する研究費が生じた。次年度以降は、上記の方針にそって、変異体試料などを大量に調整することから、遺伝子操作関連試薬、タンパク質精製関連消耗品を計上する。さらに、結晶化条件の最適化のために、結晶化試薬・消耗品を計上する。
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