2011 Fiscal Year Research-status Report
チューブリンポリグルタミン酸化修飾による一次繊毛構造・機能調節機構とその破綻
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23570209
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 酵素 / 蛋白質 / 生体分子 / 神経科学 |
Research Abstract |
本年度は、一次繊毛におけるチューブリンポリグルタミン酸化修飾の制御に深く関与している酵素を特定し、修飾制御の破綻による繊毛構造や機能の異常を見出した。 1)脱グルタミン酸酵素の一つ細胞質カルボキシペプチダーゼ1(CCP1)の自然発生ミュータント(pcd)マウスの網膜を解析し、視細胞の桿体錐体層においてチューブリンポリグルタミン酸化修飾が異常に亢進していることを見出した。pcdマウスとチューブリンポリグルタミン酸化酵素の一つチューブリンチロシンリガーゼ様タンパク質1(TTLL1)ノックアウトマウスとの二重変異体を作成し、pcd網膜視細胞桿体錐体層の異常ポリグルタミン酸化修飾亢進が抑制されることを見出した。この結果より、網膜視細胞の桿体および錐体ではTTLL1が主なポリグルタミン酸化酵素であることが明らかとなった。さらにpcd網膜で観察される桿体錐体層の薄化および視細胞の脱落が、二重変異体では観察されず視細胞桿体錐体の構造が正常であることを見出した。これによりチューブリンポリグルタミン酸化の異常亢進が網膜視細胞桿体錐体の構造異常の原因になることが示された。これらの成果を日本解剖学会において発表した。 2)国際共同研究により、ヒト繊毛病の一つであるジュベール症候群を解析し、ポリグルタミン酸化修飾酵素TTLL6の細胞内局在異常を見出した。ジュベール症候群では繊毛に局在するはずのTTLL6が繊毛に局在しなかった。ジュベール症候群の原因遺伝子CEP41のノックダウンにより、TTLL6が繊毛に局在せず、繊毛におけるポリグルタミン酸化修飾が減少することを見出した。これらの成果は共著として学術雑誌に公表された。 上記以外に、チューブリンポリグルタミン酸化修飾を抑制するポリグリシン化修飾を消失させたTTLL10ノックアウトマウスにおける繊毛機能を解析する準備を行い、実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた一次繊毛においてチューブリンポリグルタミン酸化修飾を制御している酵素(CCP1、TTLL1、TTLL6)の特定は無事終了した。これに加え、次年度以降に実施する予定であったこれら酵素の機能阻害やノックダウン・ノックアウトを行い、修飾制御異常による繊毛構造や機能の異常化を見出した。さらにポリグルタミン酸化の新しい制御系としてポリグリシン化修飾の有無に着目し、ポリグリシン化の有無によるポリグルタミン酸化修飾、繊毛構造・機能の制御を解析するための新しい観察系をセットアップした。以上のように、当初計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになったポリグルタミン酸化修飾の異常亢進による一次繊毛(網膜桿体錐体)の構造・機能異常について、とりわけ、網膜結合繊毛における繊毛内輸送(IFT)に注目しつつ、新しいポリグルタミン酸化ターゲットの発見も視野に入れ、分子メカニズムを明らかにする研究に注力する。一方で、ポリグリシン化の有無によるポリグルタミン酸化修飾制御および繊毛構造・機能制御について、前年度に確立した手法を用いて実際のサンプルを観察・解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はほぼ計画通り研究費を使用し、さらに従来の年度締め会計による年度間シームを意識することなく年度末にも物品の発注・納品を行った。結果として今年度配分研究費から10万円程度が次年度使用分になった。この次年度使用額は今年度末に納入した物品や旅費の支払に充当され、実質的には次年度への繰越はない。次年度もおおむね当初計画通りに使用する予定である。配分予定額の1,300,000円は、物品費:600,000円、旅費:200,000円、人件費・謝金:300,000円、その他:200,000円という内訳での使用を計画している。
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Research Products
(11 results)