2012 Fiscal Year Research-status Report
チューブリンポリグルタミン酸化修飾による一次繊毛構造・機能調節機構とその破綻
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23570209
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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Keywords | 細胞・組織 / 酵素 / 蛋白質 / 翻訳後修飾 / 繊毛 / 網膜 / 気管 / 微小管 |
Research Abstract |
昨年度までに一次繊毛においてチューブリンポリグルタミン酸化修飾制御を担っている酵素(TTLL1,TTLL6,CCP1)を同定し,同時にそれらの機能阻害による繊毛の構造および機能の異常を見出していた.本年度は,とりわけCCP1のミュータントであるpcdマウスについて,網膜視細胞の結合繊毛を介した物質輸送に焦点を絞り,ポリグルタミン酸化修飾による繊毛機能制御の分子基盤解明に挑戦した. pcdマウス,TTLL1KO/pcd二重変異マウスの網膜視細胞結合繊毛を高解像度で比較解析した結果,TTLL1およびCCP1に制御されるのは桿体錐体層の内節から結合繊毛までの領域におけるポリグルタミン酸化修飾であることが分かった.この成果を第45回日本発生生物学会・第64回日本細胞生物学会合同大会,第83回日本動物学会で発表した(紺野ら).さらに,視細胞内の主要タンパク質分布を免疫組織化学染色で解析した結果,ある種のタンパク質Xについて視細胞局在の異常を見出した.これらの発見は,繊毛機能,とりわけ繊毛を介した物質輸送(IFT)におけるポリグルタミン酸化修飾の役割とその破綻による繊毛機能異常に関する重要な分子的洞察を与えた点で意義が大きい. 上記にくわえ,チューブリンポリグルタミン酸化修飾を抑制するポリグリシン化修飾について、昨年度に樹立が完了したポリグリシン化酵素TTLL10のノックアウトにおける繊毛機能の解析を行った.解析の対象として気道上皮の繊毛を選んだ.予想外に,光学顕微鏡レベルでは繊毛の構造(長さなど)に変化は見られなかった.一方,機能面では僅かながらではあるが変化が観察された.この成果をゴードンリサーチカンファレンスで発表した.ポリグルタミン酸化修飾と競合するポリグリシン化修飾の有無による繊毛機能制御の一端に切り込んだ点で意義深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに一次繊毛においてチューブリンポリグルタミン酸化修飾制御を担っている酵素(TTLL1,TTLL6,CCP1)を同定し,同時にそれらの機能阻害による繊毛の構造および機能の異常を見出すなど,本年度に予定していた実施項目の大部分は昨年度に終了していた.これにより本年度は,ポリグルタミン酸化修飾による網膜結合繊毛を介した物質輸送(IFT)の制御について,その分子的洞察に迫る研究に集中することができた.実際に,ある種のタンパク質Xについて,ポリグルタミン酸化修飾制御の破綻により視細胞内における局在が異常になることを見出した.また,ポリグルタミン酸化修飾の競合因子としてポリグリシン化修飾に着目し,ポリグリシン化修飾による繊毛機能の変化を発見した.これらは,当初計画以上の成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と今年度の研究により明らかになりつつあるポリグルタミン酸化修飾による網膜桿体錐体の結合繊毛を介した物質輸送(IFT)の制御,さらにはpcdマウス網膜視細胞におけるその破綻の分子基盤について,さらに解析を進め研究成果の論文化を行う.とりわけ,タンパク質Xに関するin vitro再構成実験などにより分子的洞察をさらに深め,原著論文としてまとめ学術雑誌への公表を目指す. 一方で,今年度より解析を始めたポリグルタミン酸化修飾競合因子であるポリグリシン化修飾の有無による繊毛機能制御について,より詳細な機能比較を行うなどして解析を深め,原著論文としてまとめ学術雑誌への公表を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度もほぼ計画通りに研究費を使用した.ただし,次年度4月上旬に開催されるゴードン会議で発表するためのデータ解析や発表資料作成などに集中したため,年度末の3月中旬から実験活動を停止し100,000円程度の次年度使用額が発生した.この次年度使用額は,ゴードン会議参加・成果発表のための旅費に充当される. 次年度もおおむね当初計画通りに使用する予定である.次年度配使用額と配分予定額の合計1,400,000円は,物品費:600,000円,旅費:400,000円,人件費・謝金:200,000円,その他:200,000円という内訳での使用を計画している.
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Research Products
(9 results)