2012 Fiscal Year Research-status Report
新規に同定したERK基質群のリン酸化による制御メカニズムの包括的解明
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23570231
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小迫 英尊 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (10291171)
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Keywords | ERK / MAPキナーゼ / リン酸化 / 細胞内情報伝達 / ダイニン / 細胞運動 / 細胞間接着 / プロテオーム |
Research Abstract |
本研究では、研究代表者らが開発したリン酸化プロテオーム解析法によって新たに同定したERK/MAPキナーゼの標的基質群について、リン酸化による生理機能の制御メカニズムを包括的・体系的に解明することを目標としている。昨年度までに細胞間接着部位に局在するPHドメインタンパク質であるFam129b/Minervaと細胞質ダイニンの中間鎖Dync1i2に対し、ERK活性に依存した細胞内でのリン酸化の変動を自作した抗リン酸化抗体を用いて時間空間的に詳細に検出した。本年度はまず、Phos-tagウェスタンブロット法によってFam129bとDync1i2だけでなく、EPLIN、Nup50、Rpt5、Dync1li1、SGTなどの他の複数の新規ERK基質についてもERKによるstoichiometricな細胞内でのリン酸化を検出した。またマウス繊維芽細胞においてFam129bおよびDync1i2をsiRNAによってノックダウンしたところ、いずれもwound healingアッセイにおいて細胞運動能が低下することを見出した。さらにDync1i2とGSTとの融合タンパク質をビーズに固相化した後、ERKによるリン酸化反応を行った場合と行わなかった場合で培養細胞抽出液からプルダウンされるタンパク質の電気泳動パターンに変化があるか検討した。現在Dync1i2のリン酸化によって相互作用が抑制されるタンパク質バンドを検出しており、今後質量分析法による同定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Fam129bとDync1i2などが生理的なERK基質であることは抗リン酸化抗体やPhos-tagウェスタンブロット法によって確認することができた。またFam129bとDync1i2が細胞運動に関与することもRNAiノックダウン細胞のタイムラプス観察によって予定通り調べることができた。しかしながらHaloタグタンパク質を付加したFam129bとDync1i2を発現するプラスミドの細胞内でのトランスフェクション効率が低く、生細胞イメージングに難航している。またGSTプルダウン法による相互作用タンパク質の検索については、Fam129bでは候補となるタンパク質バンドを検出できておらず、Dync1i2では候補タンパク質の質量分析法による同定に未だ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞間接着への関与が推測されるFam129bについては、繊維芽細胞だけでなく、細胞間接着装置の発達した上皮細胞においても細胞内局在やERK活性に依存したリン酸化の変動を調べる。そしてFam129bとDync1i2のそれぞれについて、Haloタグタンパク質を付加した野生型およびリン酸化部位の変異体を細胞内に発現させ、蛍光標識後に生細胞イメージングによって細胞運動や細胞間接着への影響を検討する。Haloタグタンパク質は蛍光標識のみならず、Haloタグリガンドを介したビーズへの固相化も可能であるため、発現細胞の抽出液から相互作用タンパク質をプルダウンし、質量分析法による同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はほぼ予定通りの研究費を使用したが、平成23年度にRpt5に対する抗リン酸化抗体の作製とRpt5のSUMO化を再現性よく検出することに難航したため、研究の遂行に遅延が生じていた。平成25年度はFam129bとDync1i2に焦点を絞ってリン酸化制御の解明を進める予定である。特にHaloタグタンパク質を付加したFam129bとDync1i2の細胞内への強制発現には、新たなトランスフェクション試薬の使用やエレクトロポレーション法を試みる。またマウス上皮細胞株、蛍光標識または固相化されたHaloタグリガンド、質量分析グレードのプロテアーゼなどの各種試薬を購入して上記研究計画を推進する予定である。
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Research Products
(5 results)