2012 Fiscal Year Research-status Report
神経冠細胞が関与する、脊髄運動神経細胞体の脱落防止機構の解明
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23570245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 美香(佐藤美香) 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究支援者 (40292205)
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Keywords | 神経冠細胞 / グリア細胞 / 運動神経 / TAG-1 |
Research Abstract |
脊髄運動神経の細胞体が脊髄内に保持される機構を解明する目的で、ゼブラフィッシュ胚をモデル系として用い、発生過程中の脊髄運動神経とmedial経路を移動する神経冠細胞(及びその由来細胞)の相互作用のin vivo解析を行った。特に、神経冠細胞と運動神経の両方で発現が見られる接着分子TAG-1(CNTN2)について、TAG-1欠損胚で運動神経細胞体の脱落が観察されることから、その機能に注目して解析を行った。 (1)ドナーをTAG-1欠損胚、ホストを正常胚とするキメラ胚を作成し、 Tag-1を介した運動神経と神経冠細胞の相互作用の解析を行った。現在までに、TAG-1(+)の神経冠細胞はTAG-1(+)の軸索に接して整列するのに対し、TAG-1を欠く神経冠細胞はTAG-1(+)の神経冠細胞に接するが軸索からは離れる頻度が高いことを確認した。 (2)アクリジンオレンジ及び抗Caspase3抗体を用い細胞死の解析を行った。受精後30時間において、コントロール胚の medial経路を移動する神経冠細胞ではほとんど細胞死が観察されないが、TAG-1欠損胚では細胞死の頻度が上昇した。一方、神経冠細胞の細胞分裂の比較ではコントロール胚とTAG-1欠損胚とに差はなかった。 (3)TAG-1欠損胚では運動神経に沿うグリア形成に異常があったが、後根神経節形成に関しては正常だった。 (4)live解析により、運動神経細胞体が脊髄から脱落するタイミングは、軸索が体節の背腹境界域に達し筋と接触した後であることを確認した。 前年度の結果と合わせ、グリア細胞に分化する神経冠細胞が運動神経軸索にTAG-1を介して接着・整列することがこの系での神経細胞細胞体の保持に重要であり、また、TAG-1欠損胚での軸索と接触できない神経冠細胞の細胞死が発生後期での不完全なグリア分化を招いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いたキメラ胚作成による解析は、細胞種の識別やドナーを目的の細胞種に入れる困難さのために、非常に歩留まりの悪い実験であった。しかし現在では、手法の改善を繰り返すことにより、一定のデータを得ることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引き続き、運動神経と神経冠細胞のTag-1を介しての細胞相互作用が、運動神経細胞体の保持機構にどのように関与しているかどうかの検討を行うため、TAG-1欠損胚をドナーとし正常胚をホストとするキメラ胚による解析を行う。特に、運動神経と神経冠細胞の一方あるいは両方がTag-1機能阻害細胞になることでの挙動変化を解析する。 (2)これまでTAG-1欠損胚を得るために用いて来たTAG-1に対するモルフォリーノ・アンチセンスオリゴ(MO)の特異性を検証するために、TAG-1のRNAを作成しMOと共に胚に注射する。これにより、神経冠細胞の異常および神経細胞細胞体の脱落がレスキューされるのかどうかを確認する。 (3)脊髄神経細胞体の保持には、魚類においても神経冠細胞から派生した細胞が関与するという仮説検証のために、神経冠細胞が行う分化等に重要な転写因子Sox10に対するMO注射による解析とともに、ゼブラフィッシュにおけるその突然変異体を用いた解析も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、初年度(平成23年度)に計画していたキメラ胚作成に依る細胞間相互作用の解析を平成24年度~平成25年度に執行する変更によって生じたものであり、平成25年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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