2013 Fiscal Year Annual Research Report
学際的研究で明らかにする関東地方縄文時代人の人類学的・考古学的実像
Project/Area Number |
23570280
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安達 登 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60282125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (70333789)
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師(Lecture) (10374943)
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Keywords | Jomon / ancient DNA / mitochondrial DNA / haplogroup / degraded DNA |
Research Abstract |
現代人DNAに汚染された陳旧人骨試料の解析を通じて、信頼性の高いミトコンドリアDNA解析データを得る方法を探求した論文をLegal Medicine誌に投稿し、受理された。本研究は古人骨試料解析の信頼性を高めることに少なからぬ寄与があるものと考えられる。また、昨年度に報告した関東地方縄文時代人18個体および長野県湯倉洞窟遺跡人骨1個体のデータに、保存状態の良い縄文早期人骨として著明な長野県栃原岩陰洞窟遺跡の4個体を追加した合計23個体について、新規開発したミトコンドリアDNAのSNPs解析法によって分析をおこない、17個体からデータを得た(2013年11月2日、第67回日本人類学会大会にて報告)。 これら17個体に観察されたハプログループは、N9b1が2個体、N9b2が2個体、N9b3が2個体、N9b*が6個体、M7a1が1個体、M7a2が3個体、D4b2が1個体であり、北日本縄文時代人に類似したハプログループの種類および出現頻度を示しているものの、N9b3およびM7a1はこれまで縄文時代人からは報告例のないものであった。ハプログループN9b2およびN9b3の分布は日本列島に限局しており、しかも現代人においては稀な遺伝子型である。また、北海道、東北、関東地方の縄文時代人を比較すると、N9bのサブタイプの種類は北から南に向けて増加し、しかも、サブタイプの中で最も祖先系に近いN9b*の頻度も、北から南に向けて増加していた。これまでの報告では、ハプログループN9bの起源はユーラシア大陸北東部が有力視されていたが、本研究の成果から、このハプログループが日本列島にもたらされた経緯については従来より複雑なシナリオを想定する必要があるものと考えられた。また、本研究の結果は、所謂「縄文人」を遺伝的に均一な集団として捉えることが難しいことを示唆している。つまり、「縄文人」よりも「縄文時代人」という呼称の方が、この人類集団の実体を正確に反映しているものと考えられた。
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Research Products
(15 results)