2012 Fiscal Year Research-status Report
アブラナ属作物における逸出・雑草化メカニズムの解明
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23580024
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50322368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
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Keywords | アブラナ属 / 作物雑草化 / DNAマーカー / 植生動態 / 分布 / 侵略性 |
Research Abstract |
1.アブラナ属作物の逸出・雑草化の実態 (2)アブラナ属作物品種の逸出地点の特定:23年度の標本調査で選定した調査地域のうち,九州地方では筑後川の全流域,近畿地方では大和川の大阪府内全流域,および北陸・東北地方の一部の河川を対象に,アブラナ属植物の開花・結実期に走破し,生育地点を携帯型GPS端末に記録しながら植物体を採集した。生育するアブラナ属植物は河川ごとに異なっていた。採集した植物体の一部からDNAを抽出し,23年度に開発したDNAマーカーを用いて種を同定したところ,一部の個体で外部形態とDNAマーカーに基づく種同定の結果が異なる場合がみられた。 なお,野外調査では,アブラナ属作物の他に,緑肥作物や緑化用植物として導入されたり,それら有用植物の導入に伴い非意図的に侵入したりして,その後に逸出・定着したと考えられるナヨクサフジ,シロツメクサ,ムラサキツメクサ,オオアワガエリ,外来アサガオ類等の分布を,いくつかの環境条件の異なる生育地で記録している。 また,北海道大学総合博物館および植物園の標本庫に所蔵されているアブラナ属作物のさく葉標本を閲覧し,自生地の情報を得た。23年度に得た標本情報と文献やWebサイトの情報を元に,次年度以降の調査地域を選定した。 (3)雑草化による生態系や人間活動への影響(侵略性)の評価:大和川において,24年5月までラインポイント法による植生動態の調査を継続した。その後,アブラナ属作物を含む外来植物の自生個体を除去した実験区と無処理区を設置して植生動態のモニタリングを開始した。 2.アブラナ属作物の逸出・雑草化に関わる形質:24年度後半から,栽培系統と雑草系統を同一条件下で栽培し,生活史やシードバンク形成にかかわる諸形質を系統間で比較している。現時点で全ての系統が開花した状態であるが,開花期に系統ごとに差異がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アブラナ属作物品種の逸出地点の特定(1-2)について,予定していた6標本館のうち,4標本館について標本を閲覧し,自生地の情報を得た。これに収集した文献やWebサイトから得た情報を加えることにより,25年度での調査地は選定できた。 また,23年度に選定した調査地から収集した個体について,どのタイプの葉緑体ゲノムが存在するかを明らかにできた。その過程で,一部の個体で外部形態とDNAマーカーに基づく種同定の結果が異なる場合がみられ,その要因を明らかにするという新たな課題が設定された。 雑草化による生態系や人間活動への影響(侵略性)の評価(1-3)について,大和川水系において23年度から24年5月まで調査した植生動態の結果を25年4月の日本雑草学会第52回大会にて発表した。さらに,アブラナ属作物を含む外来植物の自生個体を除去した実験区と無処理区を設置して,植生動態のモニタリングを開始し,外来種除去による植生への影響が生育地によって異なることを明らかにしつつある。 アブラナ属作物の逸出・雑草化に関わる形質(2)について,栽培系統と雑草系統を同一条件下で栽培する実験によって,生活史特性の系統間変異を検出している。 以上のように,24年度の計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度からの調査・実験を継続する。 1.アブラナ属作物の逸出・雑草化の実態(2)アブラナ属作物品種の逸出地点の特定:標本調査等で選定した地域のうち四国地方全域と,近畿地方,中国地方,北陸地方,東北地方の一部を対象に,アブラナ属植物の開花・結実期にあたる4月~6月に走破し,生育地点を携帯型GPS端末に記録し,各地点20個体程度の植物体を採集する。採集した植物体からDNAを抽出し,開発したDNAマーカーを用いて種を同定する。得られた位置情報と遺伝情報をGIS解析することによって,日本におけるアブラナ属作物品種の逸出地点をマッピングする。 また,24年度に設定された,外部形態とDNAマーカーに基づく種同定の結果の差異の要因の解明のために,多サンプルを分析し,変異の実態を把握した上で核DNAマーカーの開発を含めて検討する。 (3)雑草化による生態系や人間活動への影響(侵略性)の評価:大阪府の大和川において,24年度に設置したアブラナ属作物を含む外来植物の自生個体を除去した実験区と無処理区において,植生動態のモニタリングを継続する。得られたデータから,在来植物を中心とした生物多様性への影響を評価する。 2.アブラナ属作物の逸出・雑草化に関わる形質:24年度後半に開始した栽培系統と雑草系統の同一条件下での栽培実験を継続し,生活史やシードバンク形成にかかわる諸形質を系統間で比較する。さらに年次反復として,25年度後半から同様の実験を繰り返す。得られたデータから,逸出・雑草化に関わる形質の特定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越し額の約30万円は,申請段階では就航していなかった格安航空会社の利用や,レンタカー代の値下げ,遺伝子解析費用の値下げ等によるものである。この繰り越し額は,24年度に新たに設定された,外部形態とDNAマーカーに基づく種同定の結果の差異の要因の解明のための,多サンプルを用いた葉緑体ゲノムの変異の解析と核DNAマーカーの開発に充てる。
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Research Products
(4 results)