2012 Fiscal Year Research-status Report
植物共生メタノール資化性細菌の葉上における生存戦略に関する研究
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23580122
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
三井 亮司 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (60319936)
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Keywords | 植物共生微生物 / メチロトローフ細菌 / Methylobacterium / 根粒菌 / PQQ / 二酸化炭素 / Phyllosphere / Rhizosphere |
Research Abstract |
植物と微生物は古くより共生関係を構築しているものが知られ、近年では根圏だけに限らず、葉上においても優先的に生育している菌群の存在が報告され注目されている。本課題研究では共生関係に関与する物質の同定やその系の応用を目的として研究を進めている。 本研究課題の進展に伴い植物微生物共生系の新たな側面が見えてきた。昨年までに植物葉上において優占種となっているメチロトローフ細菌に着目し、植物より供給されるメタノールが共生を媒介する重要な役割を果たすいくつかの結果を得てきた。また、その関係には希土類元素が大きな役割を果たしていることを初めて明らかにし、論文として投稿した。メチロトローフ細菌はメタノールを炭素源として生育することができる微生物の総称で植物葉上にはPPFM(Pink Pigment Facultative Methylotroph)と呼ばれるメチロトローフ細菌が優性種となっていることが報告されている。希土類元素の一つであるLa(ランタン)をPPFM培養液に加えるとメタノールへの生育が大きく改善することを明らかにした。また、根粒菌などの土壌微生物も植物の根から放出されるメタノールを希土類元素の一つ、La(ランタン)存在下で利用していることを発見し、根粒菌が植物との共生関係を構築するまでの土壌中ではメタノールをエネルギー源として二酸化炭素を固定するメチロトロフィックオートトローフとして生育している可能性を学会において報告した。 これらの知見から将来的に植物の生育促進や病原性微生物感染の防御などの応用面にも利用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究においては植物微生物共生系に関与する物質面からのアプローチを目的としている。そのもとで共生に関与する物質として示唆されてきたメタノールに加えて、二酸化炭素、および新たに希土類元素が重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。物質面からの共生関係の解明という目的から、おおむね順調に進展していると考えている。その内容は以下の通りである。 ◎葉上(Phyllosphere):植物葉上で生育する優占種はMethylobacterium属が知られている。希土類元素がその機構に重要な役割を果たしていることを明らかにした。ゲノム構造が明らかになっているMethylobacterium extroquens AM1を用いて希土類に応答するのはxoxF遺伝子であることを明らかにした。XoxFは希土類存在下でメタノールデヒドロゲナーゼとして働く新規な酵素であり、植物や土壌に広く存在するLaなどの希土類が生理活性を持つということを見いだした。 ◎根圏(Rhizosphere):Methylobacteriumにおいて見いだされたxoxFが根粒菌であるBradyrhizobium japonicum USDA110においても保持されていることに着目し、La存在下でメタノールに生育できることを初めて見いだした。また、そのメチロトロフィックオートトローフとしてメタノールをエネルギー源とする二酸化炭素固定により生育することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
植物と微生物の共生関係にxoxFが関与することが強く示唆されることから、xoxFに関して葉上および根圏で果たす役割を明らかにしていく。xoxFがメタノールデヒドロゲナーゼ活性を有することから、従来のメタノールデヒドロゲナーゼ(mxaF)との役割をどのように分けているのか,蛍光分光光度法による補酵素PQQの検出でxoxFおよびmxaFを分離する方法の構築、さらに検出電気泳動法による分離と活性染色法を利用し明らかにする。また、His-tagを付与したxoxFを作製し、Methylobacteriumに導入することで免疫学的に検出できる系の構築も計画している。 根粒菌に関してはLa存在下でのメタノール生育をさらに詳細に解析する。本年度においては根粒菌の研究において大きな実績を持つ東北大学の南澤究教授と連携し、xoxF破壊株、二酸化炭素固定に関与するcbb破壊株を用いた生理学的な研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画申請書に記載した消耗品の購入に使用する。内訳としては遺伝子工学や微生物・植物の培養基およびプラスチック消耗品、また国内での成果発表における旅費として一部計上する。
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