2012 Fiscal Year Research-status Report
フラボノイドの生体利用性に及ぼす難消化性糖質、特にペクチンの影響に関する研究
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23580178
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
岩井 邦久 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (80404812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森永 八江 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教 (40404818)
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Keywords | フラボノイド / ペクチン / 吸収 / 構造活性相関 / 抗酸化作用 |
Research Abstract |
フラボノイドは抗酸化活性など種々の保健効果が期待されているが、その生体利用性の低さが難点である。我々は、フラボノイドの吸収を検討する中で、ペクチンがケルセチンの吸収を増大させることを見出した。そこで本研究では、ペクチンの吸収増大作用の有益性を明らかにするために、ペクチンによってケルセチンの生理機能が向上するか否か、またペクチンの吸収増大作用を受けるフラボノイドの構造相関性などメカニズムの解明を目的とした。 平成23年度は「ペクチンおよびフラボノイドによる相加・相乗的な保健効果の検討」として、ケルセチン摂取によりLDLの酸化が抑制され、さらにペクチン摂取量に依存してその酸化抵抗性は増強することを見出した。 平成24年度は「ペクチンによる吸収増大作用を受けるフラボノイドの構造相関性の検討」を行い、B環水酸基の数と位置が異なる5種類のフラボノールをセルロースまたはペクチンとともに配合した飼料をラットに摂取させ、経時的な血漿中濃度および尿中排泄率の結果から、ペクチンによる吸収増大作用がB環水酸基数の多いフラボノールに強く発現すること、ならびにオルトよりもメタ水酸基の方が効果を強く受けることを見出した。さらに、同じ構造のB環を有し、骨格の異なるフラボノイド5種類をセルロースまたはペクチンと共に配合した飼料をラットに摂取させ、血液および尿中の各フラボノイドを定量し、ペクチンによる吸収増大作用の発現を評価中である。 本研究は、難消化性糖質の新しい生理機能を示す可能性があるとともに、低吸収なフラボノイドの吸収性向上にアプローチするものである。さらに、フラボノイドと難消化性糖質を共に豊富に含む野菜や果物などを摂取した際の生理作用を高める点から、人々の健康増進にも寄与し得ると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペクチンの吸収増大作用が及ぼす効果として、ケルセチンによるラットLDLの酸化抵抗性がペクチン摂取によって摂取量依存的に増強することを見出した。このラット血漿およびLDL中ケルセチンおよび代謝物濃度をHPLCで定量することでペクチン摂取時のケルセチンおよび代謝物濃度が増加したことを確認し、LDLの酸化抵抗性の増強はペクチンの吸収増大作用によってケルセチンの濃度が増大したためであることを証明した。 次に、セルロースまたはペクチンと共に5種類のフラボノールを配合した飼料を調製し、ラットに摂取させ、血漿および尿を経時的に採取した。これらフラボノールの血漿および尿中濃度の定量法を確立し、HPLCで定量した結果、B環水酸基数の多いフラボノールほどペクチンの吸収増大作用を受けることを見出した。また、同じ水酸基数であればオルト水酸基よりもメタ水酸基を有するフラボノール方が作用を強く受けることを見出した。 そこで、ケルセチンを基準として、カテコール型のB環を有し骨格の異なるフラボノイド5種類を準備し、血漿および尿中濃度の定量法を確立した。セルロースまたはペクチンとともにこれらのフラボノイドを配合した飼料を調製しラットに摂取させ、血漿および尿を経時的に採取した。ラットLDLの酸化抵抗性を測定するとともに、血漿、尿およびLDL中フラボノイドおよび代謝物濃度を測定中である。 ケルセチン配糖体の分析法および腸肝循環を検討するための胆管カニューレ実験に着手している。 以上のことより、おおむね予定通りに進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までの研究がほぼ予定通りに進捗していることから、今後の研究も基本的には当初の計画通りに進める予定である。 「ペクチンによる吸収増大作用を受けるフラボノイドの構造相関性の検討」では、生体内濃度定量法を確立し、ケルセチンの各種配糖体とセルロースまたはペクチンを配合した飼料を調製し、ラットに摂取させ、採血および採尿を行い、血漿および尿中ケルセチンおよび代謝物濃度を定量する。ケルセチン配糖体の吸収動態を評価し、ペクチンの影響とフラボノイドの構造相関性を解析する。 ペクチン摂取によるフラボノイド吸収増大の機序を明らかにする一環として、胆管カニューレを施したラットにケルセチンをペクチンと共に摂取させ、胆汁を採取する。胆汁中のケルセチンを分析し、その濃度推移からペクチンの影響およびフラボノイドの吸収動態に及ぼす影響を評価する。 また、消化管内でのフラボノイドの代謝・分解にペクチンが関与している可能性が考えられたことから、ペクチン摂取ラットの消化管を部位に分けて摘出し、構造相関性で検討したフラボノイドのin vitro代謝試験を行う。未変化体の消失、および代謝・分解物の生成の量と速度を測定し、吸収増加との関連性を解析する。 以上の結果から、フラボノイドの吸収に及ぼすペクチンの作用とその作用機序を解明し、果物や野菜などフラボノイドと難消化性糖質を豊富に含む食品の保健効果、並びにペクチンの新規な機能性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費992,173 (フラボノイド類, ペクチン, 精製飼料, ラット, 酵素, 有機溶媒, HPLC消耗品, カテーテル, 手術消耗品, 動物飼育消耗品, その他消耗品等) 旅費 230,000 (学会旅費等) 人件費 134,000 (実験補助謝礼@670×5時間×40日) その他 30,000 (切手・宅配料, 学会参加費)
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Research Products
(3 results)