2011 Fiscal Year Research-status Report
フルクトース過剰摂取に起因した脂肪性肝炎と機能性食品成分によるその発症予防
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23580181
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
乾 博 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20193568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フルクトース / 脂肪肝 / 脂肪性肝炎 / 食品機能性 |
Research Abstract |
ユーカリ葉抽出物の腸管フルクトース吸収阻害物質について、Caco-2小腸モデル細胞系によるアッセイシステムを用いて、各種カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、加水分解性タンニン(エラジタンニン)の1種であるテリマグランジンIが主要な阻害剤として見出された。その50%阻害濃度(IC50値)は5 μg/mLであり、比較として調べた没食子酸、エラグ酸、ケルセチン、カテキンの数10倍以上の阻害強度であった。なお、グルコースに対する阻害活性は見られず、フルクトースに高い特異性を示すことが明らかになった。 様々な植物抽出液について腸管フルクトース吸収阻害活性をラットを用いたインビボアッセイで調べたところ、ユーカリ葉抽出物以外に、バナバ葉、オリーブ葉、グァバ葉、月見草、紅景天根茎、五加皮根茎の抽出液に阻害活性が見られ、特に紅景天根茎および五加皮根茎の抽出物はユーカリ葉抽出物に比べても強い阻害活性を示した。そこで、高フルクトース食にこれらの抽出物を1%添加した飼料を与えラットを2週間飼育したところ、バナバ葉、オリーブ葉、グァバ葉抽出物に脂肪肝抑制効果が確認された。さらに、ユーカリ葉抽出物の場合と同様に、フルクトース代謝(トリオキナーゼ)および脂肪酸合成(脂肪酸合成酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)関連酵素の誘導が抑えられているとともに、肝臓障害のマーカーである血漿中アラニンアミノトランスフェラーゼ活性の上昇が有意に抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題ではフルクトースの過剰摂取に起因した脂肪肝、脂肪性肝炎発症の詳細なメカニズムの解明を行うとともに、食品成分の機能性を応用した予防法確立を目的として行うものである。研究代表者はすでに、ユーカリ葉抽出物に腸管フルクトース吸収阻害作用があり、ラットにユーカリ葉抽出物を与えるとスクロースやフルクトースの過剰摂取に起因する脂肪肝を抑制することを見出している。23年度はこれまでの研究を発展させることを中心に行い、ユーカリ葉抽出物中に含まれるフルクトース吸収阻害物質を同定した。また、フルクトース吸収阻害作用を有し脂肪肝予防効果を持つ植物抽出物を検索を行い、3種類の植物抽出物を見出しており、食品機能性成分による脂肪肝・脂肪性肝炎予防に関する研究は順調に進展している。しかし、フルクトース過剰摂取に起因した脂肪肝・脂肪性肝炎発症メカニズムに関する基礎的な研究はすでに開始しているが、残念ながらまだはっきりとした成果が得られておらず、そのため本研究は少し遅れているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、若干進展が遅れている「フルクトース過剰摂取による脂肪肝・脂肪性肝炎発症メカニズムに関する基礎的な研究」を中心に研究を進める。特に、肝臓の炎症について病理学的な検討を行うとともに、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの発現誘導について調べる。同時に、抗炎症作用を有することが知られている機能性食品成分(たとえば、没食子酸やエラグ酸など)による脂肪性肝炎抑制効果について明らかにする。また、23年度から引き続いて、腸管フルクトース吸収阻害物質についてはユーカリ葉抽出物やその他植物抽出物から単離・同定を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、23年度と同様に、動物実験に用いるモデル動物、飼料、分析試薬など消耗品に全て充当する。
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