2011 Fiscal Year Research-status Report
魚類の卵母細胞を標的とする新たな物質輸送システムの開発に関する基礎的研究
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23580243
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 助教 (10443920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄 浩一郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (80372051)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 魚類 / 卵母細胞 / 受容体標的輸送 / ビテロジェニン / 蛋白質相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、魚類の卵・稚仔魚への物質輸送システム開発のための基礎的知見を得ることを目的としている。卵母細胞に特異的に発現する受容体(ビテロジェニン受容体:VgR)を標的とし、そのリガンド(ビテロジェニン:Vg)やVgR抗体を輸送体として利用する。これら輸送体候補の生体投与試験を行い、以下の成果を得た。1)サケ科魚類からVgを精製し、蛍光化学物質で標識したものをゼブラフィッシュへ生体投与した。投与後2時間以内に卵母細胞にVgが取り込まれ、さらに受精卵や孵化仔魚にも蛍光物質が移行した。このことより、Vgの輸送体としての有効性が示された。2)標識Vgを、マダイ・メダカ・ヨウジウオへ生体投与した。その結果どの魚種においてもVgが取り込まれ、同Vgは魚類に普遍的な輸送体として利用できることが示唆された。3)サケ科魚類VgRに対する抗体(a-VgR)を同様に標識し、ゼブラフィッシュへ生体投与した結果、卵黄形成期の卵母細胞へ取り込まれたが、受精卵や孵化仔魚への蛍光物質の移行は観察できなかった。4)Vg由来の卵黄蛋白質(リポビテリンとβ’-成分)をサケ科魚類の卵から精製し、同様に標識を施してゼブラフィッシュへ生体投与した結果、リポビテリンのみが卵母細胞へ取り込まれた。以上、サケ科魚類Vgが少なくとも4種の魚類の卵母細胞や稚仔魚へ運搬されることが明らかとなり、その有効性が確認された。また、Vgの受容体結合部位がリポビテリン領域上にあることが明らかになった。これらの成果により輸送体候補の生体内運搬性状に関する知見が深化され、次年度からのモデル輸送システム開発への基盤を提供した。また、Vgの卵母細胞への取り込み・蓄積過程、あるいは受精後の胚・稚仔魚への移行過程を可視化し、詳細に観察した例はこれまで殆ど無く、魚類の卵黄形成・吸収機構の解明に向けても多くの重要な基礎的知見を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の現在までの達成度について、本年度は交付申請書に記載した研究目的である「魚類の卵・稚仔魚へ物質を輸送するシステム開発のための基盤形成」を達成するため、研究実施計画に掲げた「蛍光標識輸送体の卵・稚仔魚への運搬生理性状解析」を開始し、輸送体の標識・生体投与試験・輸送の普遍性確認等の全ての計画を実施した。また、「共免疫沈降法によるVgとVgRの結合部位の同定」に先立ち、その結合部位をできるだけ同定するため、計画に掲げた卵黄タンパク質の精製・標識およびその投与試験を行った。以上の実施内容は、H23年度の実施計画に掲げた全てを含み、その成果の一部をまとめ、すでに研究会にて公表した。よって「おおむね順調に進展している」との判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、交付申請書に記載した研究目的を達成するため、同申請書の研究実施計画に沿い本研究課題を遂行する。H24年度は「リンカーを介した輸送体・エフェクター複合体の作製」を開始し、また平行して、「共免疫沈降法によるVgとVgRの結合部位の同定」を開始する。H25年度はこれら2つの課題を完了させ、研究目的の達成に導く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(1 results)