2012 Fiscal Year Research-status Report
魚類の卵母細胞を標的とする新たな物質輸送システムの開発に関する基礎的研究
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23580243
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10443920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄 浩一郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (80372051)
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Keywords | 魚類 / 卵母細胞 / 受容体標的輸送 / ビテロジェニン / 蛋白質相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、魚類の卵・稚仔魚へ物質を輸送するシステムの開発を視野に入れ、そのための基礎的知見を得ることを目的としている。H24年度は以下の成果を得た。 リンカーを介した輸送体・エフェクター複合体の作製:サケ科魚類の精製Vgを輸送体とし、一方、エフェクターには赤色蛍光蛋白質(DsRed)を用いた。これら輸送体とエフェクターに各々アビジン又はビオチン標識を施して混合しモデル複合体を作製した。標識効率及び複合体形成の最適化を目的に、各構成成分の混合比率等を検討した結果、どの比率においても、DsRedを卵母細胞内へ輸送する複合体を得ることはできなかったため、複合体形成に関する更なる検討が必要と考えられた。 ベイト(餌)及びプレイ(捕食)プラスミドコンストラクトの構築:共免疫沈降キットを用い、カットスロートトラウトVg cDNA及びVgR cDNA配列の一部を、ベイト及びプレイベクターへサブクローニングした。即ち、Vgについては、前年度の成果およびこれまで得られた知見を基にして、主にLv領域を標的とした。一方、VgRについては、リガンド結合リピート配列を組込んだ。これらを哺乳類293細胞へ形質転換させ、両コンストラクトを発現する細胞系を得た。相互作用の有無を確認した結果、Lvの重鎖領域はVgRと結合せず、Lv軽鎖とホスビチンの複合領域に結合性が確認された。これらの成果は、これまでの他魚種における報告と異なっており、実験系の変更も含め再試験を行う必要性が示された。 異種間輸送に関する基礎的知見の獲得:抗トラウトVgR抗体を用いて他種(マダイとゼブラフィッシュ)卵巣の免疫染色及びウェスタンブロット解析を行った結果、同抗体は他種のVgR様蛋白に免疫交叉性を示したことから、魚類のVgRのリガンド結合部位は相似構造を持ち、そのため異種間のVgを取込む事が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は交付申請書に記載した研究目的である「魚類の卵・稚仔魚へ物質を輸送するシステム開発のための基盤形成」を達成するため、研究実施計画に掲げた「リンカーを介した輸送体・エフェクター複合体の作製」を開始し、予定通りその生体投与試験を行った。また、「共免疫沈降法によるVgとVgRの結合部位の同定」において、予定通りベイト(餌)及びプレイ(捕食)プラスミドコンストラクトの構築から結合試験までを行った。さらに、トラウトVgR抗体の交差性を確認した結果、本システムの汎用性を示す新たな証拠が得られた。これらの実施内容は、H24年度の実施計画の全てを含んでいることから、「おおむね順調に進展している」との判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
リンカーを介した輸送体・エフェクター複合体の作製:H24年度の試行では、アビジン・ビオチンシステム(abcシステム)を使用したモデル輸送システムは、何らかの理由で機能しなかった。H25年度は、同複合体形成条件の再検討を試みるとともに、abcシステムを用いない輸送システムの構築に向けて、輸送体であるVgへの直接的なエフェクター結合について検討する。 Vg分子中の受容体結合領域の同定:共免疫沈降により、Vgを構成する各ドメインと受容体との相互作用の有無を確認した結果、これまで受容体結合部位の候補として考えられていたLvの重鎖領域ではなく、Lv軽鎖とホスビチンの複合領域に結合性が確認されたため、特にLv軽鎖領域に関して組換え蛋白質を作製し、受容体との結合試験あるいは生体投与試験に供する。 異種間輸送に関する基礎的知見の獲得:サケ科魚類の蛍光標識Vgを輸送体モデルとし、異種雌親魚への生体投与試験を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、実験に用いる物品費に研究費の多くを充てるとともに、研究成果の公表のため学会参加旅費、実験補助のための人件費、及び論文校閲・投稿費等に関する予算を計上した。
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Research Products
(3 results)