2011 Fiscal Year Research-status Report
水産重要種カワヤツメの性成熟制御機構解明のための分子生態学的アプローチ
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23580250
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山崎 裕治 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30332654)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヤツメウナギ / 性成熟 / マイクロサテライトDNA / 正の淘汰 / GnRH / 集団構造 / 近赤外分光分析 / 資源管理 |
Research Abstract |
ヤツメウナギ類における性成熟機構解明のために,淘汰を受けている遺伝子座の探索を実施した.本目標達成のためには,性成熟のタイミングが異なる回遊型集団と河川型集団を対象に,両生活史の差異を生み出す遺伝子の発見および機能・発現解析が必要である.このような遺伝子は,生活史変異に伴う淘汰を受けていることが予想されるが,機能遺伝子そのものの淘汰を検出することは困難を伴う.そこで,機能遺伝子の周辺に座位し,ヒッチハイク効果により同様の淘汰を映し出すことが期待されるマイクロサテライト領域の探索を行った.中立仮説から逸脱したOutlier遺伝子座の探索を行った結果,異なる生活史を有する集団間でアリル組成の差異を有する遺伝子座が,正の淘汰を受けていることが明らかになった.この遺伝子座について,DNAデータベースを用いてホモロジーサーチを行った結果,当該遺伝子座の周辺に,浸透圧調整に関わるバソトシン前駆体および生殖腺発達や性行動に関連するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)前駆体などが座位することが明らかになった.このため,これら遺伝子が性成熟制御に関与している可能性が示された.また,種内における生活史変異と集団構造を明らかにするためのマイクロサテライト分析により,複数の回遊型集団からなる大集団の存在が明らかになった. 一方,性成熟に関与する生態的要因を明らかにするために,幼生個体の飼育実験を行った.特に餌条件に注目し,生息地から採取したリター,藻類,そして人工餌料を与え,成長追跡を行った.この際,体サイズや重量の計測に加えて,従来ヤツメウナギ類の変態に影響を与えることが指摘されている体脂肪量に注目し,これを測定するための近赤外分光分析法の開発を行った.これまでの実験においては,条件の違いにより,成長の差異が示された.現在最適な飼育方法の開発を含め,一連の実験を継続中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で掲げた淘汰を受けている遺伝子の探索において,その候補遺伝子を検出することができた.これにより,性成熟に関与することが期待される遺伝子の構造解析および発現・調節解析が可能となった.一方,性成熟に関与する生態的要因については,継続的な飼育が行えており,また非侵襲的な体脂肪量測定法の開発など,順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,性成熟に関与が期待される遺伝子に対する構造解析および機能解析を実施する.同時に関連遺伝子の探索を継続する.また生態的要因の解析についても,飼育実験を継続すると共に,上記遺伝子発現の性成熟への関与を検証するための操作実験を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り,大型機器等の購入予定はなく,初年度に開発した研究方法の継続実施に必要な試薬類および器具類,実験補助,そして研究成果の報告旅費に使用する.なお,次年度使用額は,初年度において試薬類のまとめ買い等により使途の必要が無かった額を含むが,この分は次年度に試薬類の購入に使用する.
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Research Products
(3 results)