2013 Fiscal Year Annual Research Report
水産重要種カワヤツメの性成熟制御機構解明のための分子生態学的アプローチ
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23580250
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山崎 裕治 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30332654)
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Keywords | ヤツメウナギ / 性成熟 / マイクロサテライトDNA / 淘汰 / バソトシン / GnRH / 遺伝的集団構造 / 資源管理 |
Research Abstract |
ヤツメウナギ類における性成熟機構解明を目指し,昨年度までの研究において,淘汰を受けていることが推定された遺伝子座Lc-locul1を対象に,周辺領域における関連遺伝子の探索とその転写調節に影響を与える構造変異を解析した.多くの脊椎動物において浸透圧調整にかかわるバソトシン前駆体配列の上流域について,塩基配列構造の解読をした結果,上流側1000bp以内に,3つの主要な変異領域が認められた.このうち2つは,マイクロサテライト構造を呈しており,残り1つは,グアニンが連続する配列の中に認められた.これら領域の変異パタンを,遡河回遊型カワヤツメ集団と河川陸封型カワヤツメ集団との間で比較した結果,生活史の違いに対応した変異パタンは検出されなかった.また,河川型の生活史を持つ近縁種スナヤツメ北方種について同領域を解読した結果,類似する変異を示したが,種特異性は認められなかった.そして,両種間で当該領域の塩基配列を比較した結果,約98%の相同性を示した.これらのことから,当該領域は高い保存性を示しており,バソトシン前駆体の転写調節に重要な役割を果たす領域であることが示唆された. また,ヤツメウナギ類資源の保護管理上に必要な遺伝的構造および遺伝子流動パタンを明らかにするために,昨年度までの河川集団間の比較に加えて,河川内における遺伝的構造を調査した.その結果,支流集団間において遺伝的分化の存在と遺伝子流動の阻害が示された.このことから,河川内に設置された堰堤等の人工構造物や夏季に河川下流域に形成される温水域が,ヤツメウナギ幼生の移動の妨げとなっていることが考えられる.このような自由な交流の阻害は,ヤツメウナギ類の河川生活期における生息地あるいは繁殖地の喪失をもたらす可能性を有しており,資源の維持管理を行う上では,これら障壁を排除することの重要性が示唆された.
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Research Products
(2 results)