2013 Fiscal Year Research-status Report
省エネルギー性と品質を考慮した水産物流通工程の最適化手法の検討
Project/Area Number |
23580278
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
渡邊 学 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30277850)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 徹 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (50206504)
|
Keywords | 水産物 / 輸送 / 環境負荷 / 品質 / 冷凍 / 氷蔵 / LCA / 官能評価 |
Research Abstract |
25年度は、計画に従って、サンマの船上凍結と生鮮輸送での品質の違いを、大規模官能評価によって定量化することを試みた。船上凍結は、気仙沼等でサンマ漁を行っている第3大喜丸に、大規模官能評価は23年度と同様に服部学園にご協力を頂けることになった。しかし、実施時期が11月にずれ込んでしまったため漁獲が不安定で、残念ながら計画通りの実験はできなかった。それでも30人程度での小規模官能評価は行ったので、この知見は必ずや今後の研究に有益となるであろう。 これとは別に、23年度の成果の発展として、漁獲から凍結までの時間が魚の品質に大きく影響するのではないかという推測を、組織学的手法で検証する実験を行った。具体的には活魚のアジを即殺後、0日、1日、2日間4℃で保存した後に凍結させ、氷結晶および細胞組織の顕微鏡観察を行い、解凍後の保水力の比較を行った。この結果、全く同じ条件で凍結させたにも関わらず、凍結までの時間が長くなるほど、氷結晶の粗大化、細胞外マトリクスの崩壊、保水力の低下が起こり、魚肉組織の凍結ダメージが増大することが示唆された。この結果から類推すれば、サンマの船上凍結により、従来の氷詰輸送と同等以上の品質が得られる可能性が高いものと期待できる。 これと並行して、当初の計画にあった、LCAによる活魚輸送の環境負荷の計算を行った。解析対象は、愛媛県から首都圏へのマダイおよびカンパチの活魚輸送で、実際に業者にヒアリングを行ってフォアグラウンドデータを得た。想定したシナリオは活魚輸送、氷蔵輸送、冷凍の3通りで、また活魚輸送の方法も、トラック(ゲージ)、トラック(泳がし)、船舶の3通りを計算した。計算の結果、船舶による活魚輸送が最も環境負荷が大きく、最も小さい冷凍の約6倍となることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元々の研究計画で予定されていた、活魚の環境負荷計算については、ほぼ計画通りの成果を得ることができた。24年度に行ったサンマのLCAでは、漁獲時のCO2排出量が含まれているのでそれを除いた値を用いて、今回の活魚輸送との比較を行ってみると、冷凍はどちらもほぼ0.3 t-CO2/1 t-product程度と同程度の値となり、今回の計算結果が妥当であることが示唆された。一方、サンマの氷蔵輸送が0.9 t-CO2/1 t-productだったのに対し、活魚輸送でもゲージを用いて少ない海水量で輸送した場合0.6 t-CO2/1t-productとなり、活魚輸送の方が環境負荷が小さくなり得るという結果が得られた。少し意外な結果となったが、これは断熱箱として用いられる発泡スチロールのCO2排出係数が大きいことが原因であり、これを避ける手段として活魚輸送も有効な選択肢であることが示された。 サンマの船上凍結品と生鮮輸送品の品質評価については、最終的な結果を得るには至らなかったが、多くのノウハウを得ることができたため、来年度こそは良い結果を得られるものと期待できる。また、アジを用いた実験ではあるが、漁獲後の凍結までの保存期間が、凍結‐解凍後の魚肉の品質に影響を及ぼすことが明らかとなっており、これよりサンマの場合でも、船上凍結を行うことで品質を向上させられる可能性が高いと考えられる。さらにこの実験の結果を元に、学術論文1本がacceptされ、国際学会でも発表を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、事業期間の延長が認められているが、これは2014年4月2日までという日程で開催された国際学会で本研究の成果を発表するための措置であり、助成研究自体は完了している。しかし、本助成事業によって得られた結果は貴重なものであり、今後とも研究としては継続的に行っていくつもりである。特に、サンマの船上凍結の優位性を確認する実験は、震災復興の観点からも早急に結論を出すべき重要な研究であるから、本助成研究で得られた知見とノウハウを生かし、本年度こそ成功させたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表を行ったオランダでの国際学会「Food Structure and Functionality Forum Symposium -From Molecules to Functionality-」の会期が2014年3月30日~4月2日であり、これの参加費および旅費を拠出するため、特に助成期間の延長を申請してそれが認められたため。 上述のような理由であるため、ほとんどは既に使用済みである。
|
Research Products
(2 results)