2013 Fiscal Year Annual Research Report
制度派農業組織経営学によるキリマンジャロ・コーヒーのフェア・トレードの評価
Project/Area Number |
23580301
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻村 英之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50303251)
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Keywords | 農業経営 / 現代制度派経済学 / タンザニア / 複合経営 / ホジソン / セン / 貧困 / 教育 |
Research Abstract |
大槻正男の農家経済経営の基礎概念を基本とし、現代制度派経済学と呼ばれるジェフェリー・M・ホジソンの議論や、アマルティア・センの議論を援用して発展させたのが、キリマンジャロ山中における経営分析のための「混成性農業経営モデル」である。同じくセンの議論に、アフリカ農村における伝統的社会(安全)保障制度の重要性を加味して導出したのが、キリマンジャロ山中における貧困分析のための「貧困と開発の概念図」である。 本研究はまず、前者の「混成性農業経営モデル」に基づいて、ルカニ村における2つの農業経営部門、すなわち利益最大化を経営目標とする「男性産物」(コーヒー、トウモロコシ、牛、林木など)部門と家計安全保障を経営目標とする「女性産物」(バナナ、豆類、牛乳など)部門の基本構造、果たしている役割(経営目標を達成するための経営行動の詳細)、課題(経営目標の達成を妨げる要因)、さらにはそれら多様な農林畜産物を高度に複合化させる「アグロフォレストリー」「農林畜複合経営」の役割・課題について解明した。 そして後者の「貧困と開発の概念図」に基づく分析により、「女性産物」と「相互扶助システム」が下支えすることで、ルカニ村民は絶対的貧困に陥らずにすんでいることが明らかになった。 さらにセンの議論から導いた「ケイパビリティ・アプローチの概念図」に基づく分析により、「男性産物」コーヒーのフェア・トレード(最低輸出価格保障+還元金支払)で、生産者価格の引き上げや中学校・図書館の建設が実現している成果の確認とともに、ルカニ村民にとっての望ましい在り方(「男性産物」コーヒーの経営成果の判断基準)、すなわち「すべての子供の中学校勉学」という「福祉」水準に近付きながらも、その「福祉」の実現に必要な多種多様なケイパビリティ、エンタイトルメント、エンダウメント、社会制度を十分保障するに至らないという、限界を解明できた。
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