2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580305
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 章 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (50346376)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 食行動 / 食意識 / 欠食 / 偏食 / 友人関係 |
Research Abstract |
近年,食習慣が大きく変化してきたわが国では,とくに中高生の食行動の乱れ(朝食欠食,偏食,不規則な食事など)が指摘されている。しかし意外なことに,中高生の食行動にかかわる複数の背景要因を同時にかつ定量的に分析した研究は極めて限られている。さらに,数少ない先行研究によって指摘されている食行動の規定要因はおもに家庭環境要因と本人の生活習慣要因のみであり,中学校進学以降に一般的にみられる行動様式の変化(例えば,交友関係や行動範囲の拡大など)に伴う家庭外要因の影響についてはほとんど検討されていない。 そこで研究初年度である平成23年度は,Benesse教育研究開発センターが2004年に実施した「第1回子ども生活実態基本調査2004」の大規模個票データを用いて,中高生の食行動を規定する要因を解明することを目的とした。 必要な情報がすべて得られた9,079人の個票データに順序ロジットモデルを適用して分析した結果,欠食・偏食傾向にある中高生の特徴として次の諸点が明らかとなった。1)女子である,2)欠食傾向にあるのは高学年生である(学年進行に伴って欠食傾向が高まる),3)偏食傾向にあるのは低学年生である(偏食については学年進行とともに是正される),4)起床時間が遅い,5)放課後にゲームセンターやカラオケによく行く,6)決まりやルールを守らない,7)夕食を1人で食べるなど孤食頻度が高い,8)スーパーやコンビニの弁当を食べることが多い(出来あいものを食べる頻度が高い),9)友だちと話が合わないと不安に感じる,10)自分の外見が気になる,11)中都市・郡部に居住している。こうした分析結果の中でとくに5),9),10)に着目すると,交友関係や学年進行に伴う行動範囲の拡大が食行動の乱れに影響していると考察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度(研究初年度)における主たる研究目標は,1)中高生の食行動にかかわる複数の背景要因を同時にかつ定量的に分析すること,2)とくに食行動の背景要因の中でも,既存研究において殆ど検討されていない要因(中学進学以降に一般的にみられる行動様式の変化に伴う家庭外要因が中高生の食行動に及ぼす影響を解明すること,3)欠食と比較して検討されることが少ない偏食についても背景要因を検討すること,の以上3点であった。「研究実績の概要」でも述べたとおり,全国規模の大規模個票データを用いて,これら3点に対応する分析結果をえることができたことから,研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」でも述べたとおり,近年食習慣が大きく変化してきたわが国では,とくに中高生の食行動の乱れが指摘されている。しかしながら,中高生の食行動にかかわる複数の背景要因を同時にかつ定量的に分析した研究は限られている。また,親子関係などの家庭内要因が思春期にある中高生の極端な問題食行動(例えば摂食障害や神経性大食症など)に及ぼす影響についてはすでに複数の先行研究によって指摘されているが,親子関係が一般的な食行動(欠食,偏食,過食など)に影響するかどうか,もし影響するとすれば具体的に親のどのような養育態度が食行動に影響を及ぼすかについてはほとんど分析されていない。そこで昨年度の分析結果も踏まえつつ,今年度は公的機関や民間研究機関から提供を受けた大規模個票データおよび独自に実施する調査データを用いて,親子関係などの家庭内要因が中高生の食行動に及ぼす影響を明らかにすることを主たる目的とする。そのために,より具体的には,以下の点について検討を行う。1)子どもが中学・高校に入学する以前も含めて,日常的な会話などを通じて親と触れ合う機会が少ない中高生ほど食行動が乱れているか。2)前記1)とも関係するが,個室のある子どもほど食行動は乱れているか。3)親から過度の干渉を受けている中高生ほど食行動が乱れているか。 さらに余力がある場合には,中高生の食行動の規定要因に関する性差,子ども時代(とくに中高時代)における食体験や食習慣あるいは家庭・学校等からの食に関する働きかけが成人後の食行動に及ぼす影響についても,内閣府の食育アンケート調査の個票データ等を用いて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は,中高生の食行動にかかわる複数の背景要因を同時にかつ定量的に分析するために,調査が比較的容易に実施できる中国地方を主たる調査地として,同地方を市街地,市街地近郊,農業地域,漁業地域の4地域に分けて,各地域の中学校・高校の協力を得てアンケート調査を実施することを予定していた。しかし,Benesse教育研究開発センターが全国の中高生を対象に実施した「第1回子ども生活実態基本調査2004」の大規模個票データが入手できたことから,平成23年度に全国規模の調査結果を分析し,その調査分析では解明できない点を平成24年度に独自アンケート調査によって明らかにした方が研究を進めやすいと考えた。そこで,おもに平成23年度に計上していた独自アンケート調査のための予算(調査データ用の統計解析ソフト30万円,調査票のコピー代15万円,人件費11.4万円)を次年度(平成24年度)に繰り越すこととした。 今年度(平成24年度)については,平成23年度からの繰越金に加えて,平成24年度の調査旅費と人件費・謝金を用いて独自アンケート調査の実施とデータ分析を行う。さらに,より高度な分析を行うためにPCと統計解析ソフトを平成24年度分の予算で新規購入する。また,すでに複数の論文が完成しつつあることから,今年度は学会報告のための旅費として研究費を支出する予定である。
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Research Products
(1 results)