2012 Fiscal Year Research-status Report
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23580305
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 章 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (50346376)
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Keywords | 食行動 / 食意識 / 問題食行動 / 心理的ストレス / 家族関係 / 友人関係 |
Research Abstract |
1)ベネッセが2004年に実施した「第1回子ども生活実態基本調査 2004」の個票データを用いて,高校生の携帯電話依存が食行動に及ぼす影響を分析した。共分散構造分析を用いた定量分析の結果は次のとおりである。第1に,男女ともに友人関係での不安感が携帯の使用頻度を高め,そのことが携帯への心理的依存を強めるという悪循環に陥っている可能性がある。第2に,携帯電話への依存傾向がみられる者は心理的ストレスも高まり,問題食行動に走る。第3に,男女ともに,家族関係は生活習慣に一定の影響を与えるものの,携帯使用や心理的ストレス,食行動への影響は女子のみ認められた。第4に,家族関係と食行動との関連性が認められた女子の場合でも,家族関係よりも友人関係が携帯使用を通じた食行動への影響が大きいことを踏まえると,今日の高校生にとって,家族関係よりも友人関係の影響がより大きい可能性がある。 2)内閣府「食育の現状と意識に関する調査」の個票データを用いて,成人の食行動を規定する要因(特に先行研究では検討されていない,子ども時代の食習慣の影響)を解明することを目的とした。その結果,概して食行動が乱れているのは,若年者,未婚者,労働時間が多いまたは不規則な者,子ども時代の食習慣が乱れていた者,生活水準意識が低い者(男性のみ該当),家庭での食卓の雰囲気が悪い者(女性のみ該当),職場の人たちが栄養バランスの良い食事への関心が低い者(男性のみ該当),食の栄養面や安全面に対する人々の関心が低い地域に居住する者(女性のみ該当)であった。特に,子ども時代の食習慣が成人後の食行動に影響を及ぼすという分析結果を踏まえると,成人の朝食欠食の増加傾向に歯止めをかけるには,子ども時代から良好な食習慣形成を促すような施策―例えば学校教育における児童を対象とした食育教育や母親に対する啓発活動―などをより積極的に推進していく必要があろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に引き続き平成24年度における主たる研究目標は,1)中高生の食行動にかかわる複数の拝啓要因を同時にかつ定量的に分析すること,2)とくに,食行動の背景要因の中でも,既存研究においてほとんど検討されていない要因(中学進学以降に一般的にみられる行動様式の変化に伴う家庭外要因)や家族関係が中高生の食行動に及ぼす影響を解明すること,3)中高生の食行動の規定要因に関する性差,子ども時代(とくに中高生時代)における食体験や食習慣あるいは家庭・学校等からの食に関する働きかけが成人後の食行動に及ぼす影響などについて解明すること,の以上3点であった。「研究実績の概要」でも述べたとおり,全国規模の大規模個別票データを用いて,おおむねこれら3点に対応する分析結果を得ることができたことから,研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
近年,食習慣が大きく変化してきたわが国では,特に中高生の食行動の乱れが指摘されている。しかしながら,中高生の食行動にかかわる複数の背景要因を同時にかつ定量的に分析した研究は限られている。さらに,数少ない先行研究によって指摘されている食行動の規定要因はおもに家庭環境要因と本人の生活習慣要因のみであり,中学校進学以降に一般的にみられる行動様式の変化(例えば,交友関係や行動範囲の拡大など)に伴う家庭外要因あるいは親子関係に代表される家族関係要因の影響についてはほとんど検討されていない。さらに,中高生の食行動に影響を及ぼす要因について,都市部と農村部の比較・検討を行った研究も極めて限られている。そこで最終年度である平成25年度は,24年度と同様に公的機関や民間研究機関から提供を受けた大規模個票データおよび独自に実施する調査データを用いつつ,とくに昨年度までに十分に検討ができていない,あるいはさらなる検討を要する以下の諸点について分析を行う。1)父親と母親の養育態度が中高生の食行動に及ぼす影響に男女差・地域差はあるか。2)友人関係が中高生の食行動に及ぼす影響に男女差・地域差はあるか。3)様々な食行動の共起(co-occurrence)と家族関係・友人関係との間に何らかの法則性が認められるか。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度については,仮説検証に必要な大規模個票データを公的機関および民間研究機関から入手することができたため,独自調査のためのコストを大幅に削減することができた。この結果,約21万円の研究費を次年度(平成25年度)に繰り越すことになった。この繰り越し分については,平成25年度の6月頃に予定しているアンケート調査の費用の一部に充当する予定である。平成25年度分の研究費については,一部を前述したアンケート調査費として支出する以外に,アンケートデータの入力や加工等に要する人件費,学会報告のための旅費,論文投稿費用などとして支出する予定である。
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Research Products
(5 results)