2013 Fiscal Year Annual Research Report
農業水利再編による水質環境の変化と環境用水の導入可能性に関する検討
Project/Area Number |
23580324
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 忠男 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (00312398)
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Keywords | 河跡湖 / 農業水利 / 水質 / 窒素 / 負荷 |
Research Abstract |
河跡湖集水域における農業基盤整備,とくに農業水利再編事業による湖沼の水質への影響と環境用水導入による影響について評価した。本年は農業水利再編事業実施後3年目の調査となる。調査は北海道美唄市茶志内沼で実施し,河跡湖に流入する排水路,河跡湖からの流出水路に水位計を設置し,現地調査と併せて年間を通じた水収支を把握した。また,全ての排水路ならびに河跡湖で採水し,水質分析に供した。 河跡湖の平均濃度をみると,TN,TP,SSのいずれも代かき期に高濃度となり,普通期には低下する傾向があった。また,基盤整備の進捗により濃度が低下する傾向もみられ,とくにその傾向はTNで顕著であった。河跡湖水の窒素の形態別濃度変化をみると,TNに占めるNO3-NとTONの割合が高い。またTN濃度は揚水機場の廃止以前よりも廃止後に低下し,その濃度低下の大部分はTON濃度の低下であることが示された。 河跡湖のTN負荷収支についてみると,2011年を除く各年の潅漑期の流出・流入負荷は同程度であり, TNの河跡湖への蓄積はないとみなせる。2011年以降,流入負荷が大幅に減少したが,この要因は用排分離やパイプラインの整備によって水田水管理が変化したものと推察できる。また揚水機場廃止以前の揚水によるTN負荷の持ち出しは,沼からの流出負荷の約4割を占めており,揚水によって沼への負荷蓄積が抑制されていたと考えられる。 河跡湖から汚濁負荷を持ち出していた揚水が消失することで,水質濃度も上昇すると予測したが,実際には水質濃度は低下傾向にあった。河跡湖周辺では基盤整備の進捗に伴う,水田水管理の変化や流入水量の減少,湖沼の水位低下,揚水機場の廃止による湖沼滞留時間の延長などが確認された。これらの影響により,抽水植物の無機態窒素吸収や懸濁物質の沈降促進など,湖沼内部の水質形成要因が変化し,水質濃度が低下したものと考えられる。
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Research Products
(3 results)