2011 Fiscal Year Research-status Report
近赤外分光イメージングによる植物内水移動可視化システムの開発
Project/Area Number |
23580355
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
松嶋 卯月 岩手大学, 農学部, 准教授 (70315464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄野 浩資 岩手大学, 農学部, 准教授 (90235721)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 重水 / トレーサ / 透過型 |
Research Abstract |
現在のところ,植物体内水移動の可視化には,大規模中性子源を必要とする中性子ラジオグラフィや,高価な磁気共鳴画像装置(MRI)といった設備が必要である.そこで,本研究では近赤外線カメラ等の比較的安価な器機および重水をトレーサとして用い,植物体内の水移動を可視化する近赤外分光イメージング装置を開発することを目的とする.まず,植物根における水と重水の吸収特性に相違を検討するために,植物根による水および重水吸収速度を比較した.一標本t検定を行った結果,植物試料における水および重水の吸収速度には有意な差が見られ,植物根による水および重水の吸収速度は,水の場合は速く,重水の場合は遅かった.これより,植物体内において重水は水より移動しにくいことが示唆された.すなわち,本法を用いる場合は,重水の移動が水より遅いことを考慮する必要がある.続いて,植物内における重水トレーサの移動を可視化するための,透過型近赤外分光イメージング装置を試作した.100Wの近赤外光源から照射された光は植物を透過し,近赤外線カメラに入射する.植物による重水吸収の程度は,重水供給後の連続画像をその初期画像で除算した比で比較した.重水トレーサを植物に供給した後,時間の経過に伴い葉の部分における画素値が増加した.これは,イネが重水を吸収をした結果,葉の近赤外線透過度が高くなったことを示す.また,根からの水の流れに対して上流側の葉においては,25分後には60分後と同程度に画素値が増加したのに対し,下流側の葉の画素値は,25分後には60分後のおよそ1/2であった.これは,各葉による重水吸収速度の相違を示すと考えられ,すなわち,開発した近赤外分光イメージング装置および重水トレーサを用いることでイネにおける各葉の水移動を可視化可能であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)研究目的の(1)マクロレベルの可視化については,根および茎・葉における重水トレーサを用いた可視化を達成できたため,当初の計画以上に進展している.(2)ミクロレベルの可視化については,近赤外線用顕微鏡レンズの評価途中で,おおむね順調に進展している.(3)ユーザーインターフェースの構築については,卒論レベルで学生が用いることのできるアプリケーションを試作し,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
マクロレベルの可視化においては,植物体の各部位,根・茎・葉における水移動の可視化ににより適した測定用ジ具を設計・試作する.また,開発した植物体内水移動可視化法について成果をまとめ研究発表への準備を行う.ミクロレベルの可視化においては,顕微鏡撮影での植物細胞内への水移動の可視化を試みる.ここでは,近赤外カメラの感度が足らずS/N比が低い可能性が予想される.その場合は近赤外光源の照度を上げ,測定用ジ具を冷却するなどの対応を行う.また,適宜,画像処理アルゴリズムの適用によりS/N比の改善を行う.ユーザーインターフェースの構築においては,マクロレベルの可視化に関連する作業では,引き続き水移動速度解析用のPCプログラムの改良を行う.加えて,可視化装置のカメラや光源を制御するユーザーインターフェースを試作する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はミクロレベルの可視化にかかわる研究をおこなう.ファイバーカップリングレーザーシステム(B&W Tek)は明るいうえ比較的試料に与える熱のダメージが少ない単波長ビームを供給でき顕微鏡イメージングに必須である.価格はカタログから得た.近赤外対物レンズは顕微鏡イメージングの対物レンズとして用い,顕微鏡は試作装置作成に利用する.いずれも価格は商社に問い合わせた.マイクロシリンジドライバは重水トレーサを植物細胞に最適なタイミングで与えるための自動供給に用いられる.価格はカタログから得た.
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