2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580375
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
相馬 幸作 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (70408657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増子 孝義 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (50123063)
林田 まき 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 講師 (80435255)
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Keywords | エゾシカ / 一時養鹿 / 肥育成績 / 肉成分 / 解体時期 |
Research Abstract |
生体捕獲エゾシカの食肉生産システム(一時養鹿)において、エゾシカの飼育コスト低減が課題となっている。野生エゾシカを生体捕獲後、一定期間飼育することで肉質の改善が試みているが、近年の配合飼料価格上昇が影響し、牧場へ導入後できるだけ短期間で食肉処理されるか、捕獲時に外見上十分な体格の個体は、そのまま食肉処理されている。このため、本試験では肥育効果を検証するため、3月に捕獲後4月または10月まで飼育し、肥育成績について検討した。 供試動物は2012年3月に前田一歩園財団所有地(阿寒湖周辺)で生体捕獲された野生エゾシカ成雌8頭とした。導入ジカは4月(4月解体区)と10月(10月解体区)に解体処理し、飼育成績と枝肉成績を比較した。両区のシカの平均体重は導入時体重を基にそろえ、一群で飼育した。給与飼料はNRC(2006)を参考にし、4月までは乾草を自由摂取、アルファルファヘイキューブ、ビートパルプ、圧片トウモロコシを制限給与した。4-10月の期間は乾草および牧草サイレージを自由摂取、トウモロコシサイレージ、ビートパルプ、フスマ、大豆粕を制限給与した。 その結果、飼料の乾物摂取量は3-4月の間は低かったが、その後9月まで増加した。飼育成績では、体重は導入時期よりも4月解体では増加しなかったが、10月解体ではわずかに増加した。枝肉重量、正肉重量、枝肉歩留、正肉歩留は10月解体は4月解体より低く、歩留では有意差(P<0.05、P<0.01)が認められ、枝肉歩留は2011年度の試験における成雌ジカの値(50.8-55.4%)よりも低かった。10月解体の枝肉成績が4月解体よりも低かった要因として、乾物摂取量中59.0%を占めた乾草の粗蛋白質含量が7.7%(乾物中)と低かったこと、本試験期間の平均気温が例年よりも高かったことなど、複数の要因が影響したものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度の試験では肥育の効果について検証を行ったが、暑熱の影響と給与飼料の粗蛋白質含量が当初予測よりも低かった影響を受け、2011年度の肥育成績よりも低い成績となった。肉の成分値については、今後順次検証を行っていく予定であるが、成分分析値だけではなく、ヒトによる食味官能試験を実施し、鹿肉の味に違いが出るか検討したいと考えている。 2013年度の研究については、給与飼料の代替を想定した試験を予定している。すでに地元JAから委託試験により、ヒツジによる消化試験の結果が得られていることから、デンプン粕を給与し肥育試験を行うこととした。デンプン粕は水分が高いことから、試験期間中の給与を考慮し、サイレージ調製を行って給与することにした。その際、水分調整が必要なことから、フスマを混合することにした。デンプン粕サイレージの調製に際し、原料のデンプン粕はJAの協力を得ることができた。また、調製後の発酵品質は良好であり、成分分析を基に飼料の給与設計を現在行っているところである。 これらのことから、2012年度の試験については新たな視点での評価を検討し、実施していく方向で調整している。また、2013年度の試験についても、給与飼料の確保ができたことから、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体捕獲エゾシカの肥育には、給与飼料費の軽減が欠かせない。捕獲後すぐに食肉処理を行うことも考えられるが、市場のニーズは安全安心な食品を求めているだけではなく、レストランなどチルドした鹿肉の需要もある。このニーズに対応するためには、一定数の飼育エゾシカが必要であるが、飼育期間が長くなるほど飼料給与費は高くなる。この対策として、既存家畜の飼養管理と同様に既存の配合飼料に代替しうる、農産物残渣や規格外野菜の給与など、エコフィード活用が不可欠と考える。北海道は農産物の生産が盛んであり、これら副産物や規格外野菜の産出量が多いことから、十分に活用可能と考えられる。また、フードマイレージの観点からも、地場産飼料資源活用が運搬費の軽減も含め地域の産業を振興する上でも有効と考えている。 2013年度は、本学オホーツクキャンパス周辺で生産されるデンプン粕を活用した肥育試験を実施する。具体的には、対照区として圧片トウモロコシを給与し、試験区には乾物給与比率で圧片トウモロコシの給与量と同等量を置き換えた飼料給与する。基礎飼料はともに同じ内容とするが、両試験区の粗蛋白質含量をできるだけ統一する。なお、デンプン粕は水分含量が80%以上と腐敗しやすいことから、ふすまを混合して水分調整を行っており、2012年度に調製を終えている。本試験より、肥育成績や肉成分に及ぼす影響を考察する。 今後の推進方向として、本試験方法を活用することにより、今後は廃棄される地場産の規格外野菜の活用についても試験を行い、地場の飼料資源の活用と飼料給与費の低減といった二課題について対応していきたいと考えている。また、さらなる検討課題としては、これらの肥育試験により得られた鹿肉を用い、ヒトによる食味官能試験を行うことで、肉の成分だけではなく、鹿肉の味への影響についても検討を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の研究費については、分析に係る消耗品費、エゾシカの解体処理に伴う消耗品費および委託処理費、旅費の使用を予定している。 分析に係る消耗品については、分析用の試薬、蒸留装置のフィルターなど適宜購入する予定である。 エゾシカの解体処理については、2013年度の試験も2012年度と同等数の生体捕獲エゾシカを確保し、解体処理を行う予定である。解体処理に当たり、処理を委託する食肉処理場は、2012年度に北海道HACCPを取得した。これに伴い、2013年度の解体処理はより高度の衛生管理の下で処理が行われる予定である。このため、血液などの採材は許可された処理室へ入室して行うことになる。しかし、入室にあたり、ディスポーザブル作業着、ヘッドキャップ、カバーブーツなどの着用が必要となることから、これらの購入を行う予定である。また、委託費の上昇もあり、この点については処理場と協議し適宜対応したいと考えている。 旅費については、エゾシカの解体処理と採材に関する処理場作業員との打合せ、次期試験計画へ向けて関係機関との調整および学会発表(日本畜産学会を予定)に充当したいと考えている。
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Research Products
(3 results)