2012 Fiscal Year Research-status Report
胎盤形成期におけるadipsin/ASP脂質取り込み経路の生殖生理学的役割
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23580407
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
日下部 健 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20319536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 利也 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00169111)
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Keywords | 流産 / 胎盤 / 補体 / 脂質 |
Research Abstract |
前年度の研究で、adipsin/ASP系による流産発症時における胎盤内脂質取り込み経路の活性化、および流産後の胎盤の病態変化について、明瞭な関与を認めることが出来なかった。本年度では他のモデル系も用いて、adipsin/ASP系がもつ妊娠生理学的な働きについて検討した。また、別の可能性として、補体活性化と流産誘導の可能性についても検討を行った。 栄養膜細胞の分化誘導には脂質代謝に係わる因子が関与していることが知られている。培養系で栄養膜幹細胞から栄養膜巨細胞を誘導し、細胞内のadipsinについて調べたが、両細胞ともに明瞭な発現を認めることが出来なかった。 効率よく自然流産を発症するCBA/J x DBA/2マウス交配系において、血清中のadipsinタンパクの上昇、胎盤中のadipsinおよび補体C3の増加を確認した。また、補体抑制因子Cryyは血清では変化なく胎盤局所で変動し、とくに流産胎盤では正常胎盤に比べ有意に減少していた。胎盤以外のadipsinの産生部位は確定していないが、このモデル系では血中で増加したadipsinが局所組織の補体系を活性化する可能性があり、胎盤においてはCrryが流産を回避するための重要なキーファクターであることが示唆された。 エレクトロポレーション法でadipsinの胎盤への強制発現を試みた。方法論的にも新規性があり、試行錯誤したが、プラスミド溶液の注入による物理的な胎盤傷害が頻発し、予定した強制発現量まで到達することが出来なかった。現在、adipsinの妊娠維持への直接作用について、方法を変更して検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栄養膜幹細胞を用いた研究では、早い段階で結果を得て仮説の違いを見出し、次の実験に移行することが出来た。 CBA/J x DBA/2マウス交配系では、想定していた補体系の変動を確認し、さらに胎盤以外のadipsinの産生部位と流産発症との生殖学的な関係性について考察する時点まで至った。 一方で、エレクトロポレーションを用いた実験では胎盤への遺伝子導入法を確立することが出来なかったが、クローニングとレポーターベクターへの組み込みは完了している。後肢の筋肉へ遺伝子導入を行い、adipsinを全身循環させる実験系の確立を試行中である。同時に、発現ベクターを介してのリコンビナントタンパク作成も終了しているので、妊娠マウスへのadipsinタンパクの投与実験を計画中である。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ予備実験の段階だが、妊娠初期の血中adipsinの増加は流産に関連する可能性がある。血中へのadipsin分泌は生殖生理学と密接に関連し、流産に関連する場合、その分泌量は厳密に制御される必要がある。故に、adipsinの主要な産生部位の検討を改めて行い、その制御機構について考察する。 また、血中のadipsinが胎盤に影響する機序を考えると、重要な作用部位の候補は血管であり、胎盤形成期に母体血管は急速なリモデリングを受ける。血管の変化・関連因子に着目することで、adipsin/ASP系の妊娠生理学的な役割を検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に物品費に充当し、試薬・抗体・器具・実験動物などの購入費用に充てる。 また、7月にカナダ・モントリオールで開催される国際繁殖学会で成果を発表する予定のため、交通費・参加費にも充当する。
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Research Products
(14 results)