2013 Fiscal Year Research-status Report
高温障害による土壌病害の激発化プロセスの究明と克服シーズの創出
Project/Area Number |
23580460
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松元 賢 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教 (60304771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 健一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40150510)
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Keywords | 土壌伝染病害 / 高温障害 / 生物的防除 / 病原レース検定 / 植物ベイトトラップ法 / インドシナ半島 |
Research Abstract |
本研究は、高温気象による転換畑作物の被害の激発化および蔓延化激の要因を究明し、環境に優しい熱帯性土壌病害の克服技術を創生することを目的としている。平成25年度に実施した研究は以下の通りである。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査:平成25年度では、研究分担者の所属する九州大学農学部植物病理学研究室古屋成人准教授らとともに、平成25年12月にミンマー国のマンダレー への調査研究を行う。本研究でミャンマー国を訪れるのは2回目目であり、前回、水田稲作の病害の被害状況の調査と、問題となる病原菌類の収集が目的であるか、今回は、中山間地区の畑作圃場における土壌伝染性病害の被害実態の把握と、効果的な防除法の開発ための基礎調査を行う。そこで、本年度において稲作および野菜・花卉類に発生する植物病害の被害調査および病害サンプルの収集を行うのが目的である。現地において、イエジン農業大学を訪問し、植物病理学研究室Myo Zaw博士らとの研究打合せおよび病害調査を行う。 【課題2】熱帯病害のモデリング解析:平成25年度では、熱帯環境における稲作収穫後の転換畑作病害の発生のモデリングを確立するために、病害発生のモデリングに不可欠なパラメーターの設定のためのファクターを検討する。本年度では、熱帯・亜熱帯地域で発生するイネいもち病菌の発生生態のメカニズムを解明するため、ミャンマー産イネいもち病菌とジャガイモ疫病のレース検定およびこれらの病抵抗性遺伝子の特定を行うための試験を行った。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の探索 植物ベイトとラップ法を応用した耕種的防除法を開発するために、香草・ハーブ類の植物からの抗菌・殺菌成分を抽出し、土壌伝染性植物病害防除に有効な抗菌・殺菌成分の検討を継続して行った。また、ミャンマー国内で広く入手が可能な香草・ハーブ類植物の調査・サンプル収集を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、当初に設定した3つの課題について、各課題の進捗状況について下記の通り示すものである。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査では、平成25年12月に研究分担者の所属する九州大学農学部植物病理学研究室古屋成人准教授らとともに、ヤンゴン市周辺で稲作病害、マンダレー市周辺の水田・畑作圃場およびカロ市とインレー湖周辺の畑作圃場において、ナス科作物(ナス、トマト、ピーマン)、アブラナか植物(ダイコン、レタス、アブラナ)、豆か植物(ラッカセイ、インゲン、ダイズ)等の被害サンプルを調査し、土壌伝染性の植物病原菌かつ細菌類によって引き起こされる病害の被害実態の解明とと原因菌の収集に成功した。 【課題2】熱帯病害のモデリング解析では、ミャンマー国出身修士課程学生Myo Zaw氏と共同で、ミャンマー産イネいもち病菌およびジャガイモ疫病菌ののレース検定を行ない、ミャンマー産の病原菌類の遺伝的特徴は我が国由来の稲熱病や疫病とは遺伝的にかけ離れた系統群であることを発見した。特に、ミャンマー産イネいもち病菌は日本産とは系統が明確に異なり、ミャンマー産イネいもち病菌の抵抗性遺伝子は、ミャンマー内外由来のイネには存在せず、ミャンマー固有のイネのみに抵抗性遺伝子が保持されていた。ミャンマー固有のいもち病病原遺伝子が存在するとともに、他の東南アジア諸国とは異なる抵抗性遺伝子の特定および病害抵抗性イネの育種が必要であることが示唆された。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の探索では、イネリゾクトニア属菌およびイネいもち病菌の抗菌活性試験を行った結果、カワラヨモギからキャピラリン、チョウジからオイゲノールのそれぞれの抗菌・殺菌成分の特定に成功し、培地上おいて、これら抗菌成分がイネ病原菌の菌糸生育を阻害する効果がみられた。これらの植物を利用したベイトトラップによる病害防除法の基礎研究につながることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画の最終年度にあたるため、平成23年から25年度にかけて行った研究成果をとりまとめるとともに、申請年度の中で特に緊急性の高い研究課題について次年度にまたいで研究することが認められた。詳細については下記の通りとして、次年度以降の研究課題と併せて推進していく予定である。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査結果のとりまとめについて、申請期間内で実施したベトナムおよびミャンマーを含む東南アジアにおいて発生する熱帯・亜熱帯土壌病害の発生生態について各国の共同研究組織とまとめる。特にイネおよび蔬菜類に発生する土壌病害の原因菌であるリゾクトニア属菌、フザリウム属菌およびピシウム属菌の病害については、病害の発生生態について作物毎にとりまとめ、東南アジアと我が国との違いについて比較解析を行う。 【課題2】高温障害による熱帯発土壌病害のモデリング解析では、高温障害により激発化が示唆される土壌病害のうち、ジャガイモ疫病菌やリゾクトニア属菌およびフザリウム属菌ついて、我々の予測を超える病害拡大・進展が起こっていることから、当初設定した高温障害がもたらす土壌病害のシミュレーション解析をふまえ、気象的・かつ物質の動態のエネルギー的な大規模な物質循環システムを考慮した、地球温暖化の進行に伴う土壌病害の発生予察に利用するための病害診断システムの構築を行う。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の利用評価については、キャピラリンやオイゲノールなどの抗菌・殺菌成分を実際の被害発生圃場に適用し 、難防除土壌病害の防除への有効性について検証するために、過去の科研の研究で行った植物ベイティング法を応用した生物的・好手的防除法の適応かつ実証実験による技術基盤を再構築するとともに、。植物素材を利用した耕種的防除法であるトラップ植物,共生植物および対抗植物による熱帯・亜熱帯地域での利用評価について新規提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年12月にミャンマー国イエジン農業大学のミョーゾウ氏とともに、中山間地区の土壌病害激発地域の病害調査および発病植物個体のサンプリングを行った。その結果、ジャガイモそうか病およびジャガイモ疫病の大発生を確認した。ミャンマーにおけるジャガイモ疫病の発生源の究明および発生圃場の防除対策および病害蔓延防止策について急遽対策が必要であると判断し、これらの原因究明に関する調査呂補の確保が必要であると判断した。そこで、病害防除対策に必要な病害発生のメカニズムおよび病原菌の性状解析を行なうこととした。 平成26年度5月もしくは12月に再度ミャンマーを訪問し、インレー湖周辺部の中山間地区で激発しているジャガイモ疫病をサンプリングし、同国において5-7月の時期に比較的激発がみられるカロ市周辺部分のジャガイモ疫病のレース検定およびインレー湖のサンプルと遺伝的な比較解析を行うとともに、病気の蔓延のメカニズムを解明し、現地で適用可能な植物ベイティング法を応用した生物的防除法の実証実験および病害防止評価を行う。
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Research Products
(8 results)