2011 Fiscal Year Research-status Report
不斉カルボン酸によるホウ素試薬および関連試薬の活性化に基づく新規触媒反応の開発
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23590009
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉浦 正晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (00376592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 触媒反応 / カルボン酸 / ホウ素試薬 |
Research Abstract |
筆者はごく最近、ボロン酸のα,β-不飽和ケトンへの不斉共役付加反応において、O-モノアシル酒石酸が有用な触媒となることを見出した。これまで不斉カルボン酸が炭素-ホウ素結合の活性化に用いたられたことはなく、本結果は有機分子触媒の新しい可能性を示すものである。そこで本研究は、不斉カルボン酸を基軸とするシンプルな触媒系を用いて、ホウ素試薬や関連試薬および入手容易な原料を活性化することにより、新規な触媒的不斉合成法を開発することを目的に開始した。以下に、本年度に得られた成果を要約する。(1)上述の不斉共役付加反応におけるO-モノアシル酒石酸の触媒作用機構を解明するために、触媒が持つ2つのカルボキシル基のうちの1つを誘導化することを検討した。その結果、片方のカルボキシル基を選択的にエステル保護する手法を見出すことができた。また、そのエステル保護体を用いて反応を行ったところ、無保護体と同等の触媒活性と立体選択性が得られることが分かり、触媒作用機構の解明に向けた重要な知見となった。(2)計算化学による触媒作用機構の解明を目指し、アルゼンチン・ロサリオ国立大学のPellegrinet博士との共同研究を開始した。予備的検討では、推定反応機構を支持する結果を得ている。(3)カルボキシル基の高極性を利用し、触媒の回収・再使用を検討した。反応溶液をショートシリカゲルカラムに通し、異なる溶媒系によって生成物と触媒をそれぞれ溶出させることによって、良好に触媒を回収することができた。また、同じ反応において、回収触媒を数回再使用できることが分かった。(4)O-モノアシル酒石酸をアリルボロネートによるケトンの不斉アリル化反応に適用したところ、中程度のエナンチオ選択性ながら良好に反応が進行することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、見出した不斉カルボン酸触媒の「触媒作用機構」および「回収・再使用」について重要な知見を得ることができ、おおむね目標を達成したと評価している。新しい反応への適用に関しては、まだ大きな知見は得られていないものの、カルボン酸触媒に特徴的な反応性を見出しているので、今後の展開に活かしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の1~4の研究をさらに進展させるとともに、「新規反応への展開」および「関連試薬の活性化」を検討する。具体的には以下の内容を計画している。(5)酒石酸骨格以外の新しい不斉カルボン酸触媒の開発を目指す。すでに、カンファー骨格を有する触媒を合成しており、有望な結果を得ている。(6)ボロン酸のα,β-不飽和ケトンへの共役付加反応およびカルボニル化合物やイミンへの1,2-付加反応をさらに検討すると共に、ヒドロホウ素化に続く共役付加反応、共役付加反応に続くアルデヒドやイミンとの反応など、新規な連続的な反応へと展開する。(7)炭素-炭素結合形成に限らず、還元や酸化反応への展開を目指す。(8)触媒中のカルボキシル基以外の官能基を適切に選択することにより、ホウ素のみならずケイ素、亜鉛、カルシウムなどの関連試薬の活性化を行い、新規な不斉触媒反応の開発を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、学生1名の協力を得て、上述の1~6の研究を中心的に展開するとともに、7、8の研究についても端緒を得るべく検討を開始する。研究費は、試薬、有機溶剤、ガラス器具などの消耗品の購入、および、研究成果を学会や学術論文に公表するための費用に充てる。
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Research Products
(9 results)