2012 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用可能な癌細胞特異的全身投与型siRNAデリバリーシステムの構築
Project/Area Number |
23590045
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
有馬 英俊 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (50260964)
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Keywords | デンドリマー / シクロデキストリン / 葉酸 / siRNA / がん / 標的指向化 / DDS / ジェネレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで我々が開発してきた新規遺伝子・siRNAキャリアであるPAMAMデンドリマー/α-シクロデキストリン結合体(α-CDE)に、癌細胞指向性素子であるPEG化葉酸を新たに修飾したFol-PEG-α-CDE(Fol-PαC)のsiRNAキャリアとしての性能を向上させ、臨床応用可能な全身投与型癌細胞選択的キャリアを構築することである。これまでの検討から、デンドリマーのジェネレーションが3のFol-PαC(G3)は、siRNAとの相互作用が十分に強くなく、血中においてsiRNAが複合体から解離・分解し、がん組織へのsiRNAの送達効率が低いことが明らかとなった。そこで、平成24年度は、キャリアのコア分子であるデンドリマーのジェネレーションを4に変更し、Fol-PαC(G4)のRNAi効果を検討した。その結果、Fol-PαC(G4)は、Fol-PαC(G3)と比較して、血清耐性に優れ、in vitroおよびin vivoにおいて優れたRNAi効果を誘導可能なことが示唆された。また、Fol-PαC(G4)/siRNA複合体の細胞障害性は極めて少なく、安全性に優れることが示唆された。しかし、Fol-PαC(G4)は、分子中にα-シクロデキストリン(α-CyD)や Fol-PEG 基が導入されているが、実際には種々の置換度の混合物である。そのため、同じ置換度を有する Fol-PαC(G4)であっても、同一構造とは言えず、さらに置換度や置換場所の僅かな違いがRNAi効果の強さや再現性ならびに安全性に大きな影響を及ぼす可能性も考えられる。そこで今後、純度の高いFol-PαC(G4)を得るため、Fol-PαC(G4)をゲルろ過やHPLCにより分離・精製し、単一置換度を有する sFol-PαC(G4)を分取し、各種検討を行い、混合物の場合と比較検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々が開発したFol-PαC(G3)は、市販の核酸医薬導入試薬に比べて細胞障害性が極めて低く、核酸導入効率および安全性に優れることを報告した。しかし、Fol-PαC(G3)/siRNA複合体を担癌マウスに静脈内投与後のRNAi効果は十分とは言えず、かつその効果の再現性が低いことが問題点として浮かび上がった。その原因として、Fol-PαC分子は、血中でsiRNAと解離し、腫瘍組織へのデリバリー効率が低いこと、また、異なる置換度のFol-PαC基およびα-CyD基を有する混合物であるため、その分子構造がロット間で相違したためと推定された。平成24年度までに、我々は血中でキャリアとsiRNAが解離せず、安定な複合体として腫瘍組織および癌細胞へ到達可能なキャリアの構築を企図し、デンドリマーの世代を第3世代から第4世代に変更し、従来よりもsiRNAとの相互作用が強いFol-PαC(G4)の合成を行った。PEG化葉酸の置換度(DSF)の異なる4種のFol-PαCs(G4, DSF2, 4, 6, 11)を調製し、in vitroにおけるRNAi効果を検討したところ、Fol-PαC(G4, DSF2)が最も優れたRNAi効果を誘導した。さらにFol-PαC(G4, DSF2)は、50%血清共存下においても、有意なRNAi効果を誘導可能であった。さらに、担がんマウスにおいて、Fol-PαC(G4, DSF2)/siRNA複合体を静脈内に投与後のRNAi効果は、Fol-PαC(G3)よりも優れることが示唆された。これらの結果より、Fol-PαC(G4, DSF2)はsiRNAキャリアとして有用である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べてきた Fol-PαC(G4)は、分子中にα-CyDやFol-PEG基が導入されているが、それらの置換度は平均値であり、実際には種々の置換度の混合物である。そのため、同じ置換度を有するFol-PαC(G4)であっても、同一構造とは言えず、さらに置換度や置換場所の僅かな違いがRNAi効果の強さや再現性ならびに安全性に大きな影響を及ぼす可能性も考えられる。そこで平成25年度では、純度の高いFol-PαC(G4)を得るため、Fol-PαC(G4)をゲルろ過やHPLCにより分離・精製し、単一置換度を有するsFol-PαC(G4)を分取し、その物理化学的性質を明らかにするとともに、in vitro RNAi効果、細胞障害性、担癌マウスに静脈内投与後の体内動態、in vivo RNAi効果および安全性に関する検討を行い、混合物の場合と比較検討する。次に、最適な高純度の sFol-PαC(G4)/siRNA 複合体のin vivoにおけるRNAi効果(抗腫瘍効果)について検討を行う。ここでは、siRNAの投与量、キャリアとのチャージ比、投与容量、投与回数などについて検討を行い、Fol-PαC(G4)混合物の場合と比較検討する。もしここで優れたRNAi効果が得られなかった場合には、Fol-PαC(G4)にペプチドや脂肪酸などの機能性素子を導入し、RNAi効果の改善を目指す。同時に投与後の組織障害性、血液生化学検査値を測定し、安全性の評価も行う。さらに、Fol-PαC(G4)の化学的・物理的性質を詳細に検討するとともに、化学的安定性を確かめるため、苛酷試験・加速試験を行い、保存安定性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するためには、遺伝子の発現を特異的に抑制するための機能性核酸である siRNAが必要であり、標的遺伝子としてルシフェラーゼ、Stat3、PLK1の3種を対象とし、継続的に研究を行うため、siRNAの購入が毎年必要である。次に、Fol-PαC(G4)の合成のため、PAMAMデンドリマー、α-CyD、各種PEG、葉酸の購入が必要である。また、α-CDE, Fol-PαCの合成試薬および精製試薬が必要である。さらにそれら結合体の構造解析および物理化学的性質を明らかにするための各種試薬・器具が必要である。次に in vitroにおける RNAi効果を培養細胞(KB細胞, 4T1細胞, MCF7細胞、A549細胞)にて行うため、細胞培養試薬・血清・培養器具ならびにこれら細胞を細胞バンクから購入する必要がある。また、RNAi効果をリアルタイムPCRおよびWestern blotにて評価するため、リアルタイムPCR試薬および抗体等の購入が必要である。細胞障害性の研究のため、WST-1 試薬等が必要である。また、in vivoでのRNAi効果、抗腫瘍効果、体内動態、安全性に関する検討を行うため、実験動物としての正常マウスの購入およびヌードマウスの購入が必要である。また、体内動態の研究のため、ラジオアイソトープおよび各種蛍光試薬が必要である。なお、実験を遂行するための機器・施設等は全て整っているため、設備備品の購入は必要でない。さらに、国内での研究成果の発表のための旅費、海外での研究成果の発表のための旅費が必要である。さらに学術雑誌への論文投稿料を必要とする。なお、各品目が研究経費の90%を超えるものや特に大きな経費を占める経費はない。
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