2011 Fiscal Year Research-status Report
多点分子認識ESIラベル化による先天性代謝異常症の新規精密検査法の開発
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23590046
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
東 達也 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90272963)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 先天性代謝異常症 / LC/ESI-MS/MS / 先天性副腎過形成症 / Smith-Lemli-Opitz症候群 / 多点分子認識 / ESIラベル化 / ビシナルジオール / s-cis-ジエン |
Research Abstract |
先天性副腎過形成症 (CAH) 再検査用マーカー,pregnanetriol (PT) 及びpregnanetriolone (PTL) とSmith-Lemli-Opitz症候群 (SLOS) 診断マーカー,7-デヒドロコレステロール (7DHC) の多点分子認識ESIラベル化法を検討した. まずPT及びPTLについては,その特徴的部分構造であるビシナルジオールを認識し, ESI-MS/MS応答性を大幅に引き上げるラベル化法を開発した.すなわち,3-dimethylaminophenylboronic acid (DAPBA) をラベル化剤に用いると,PT及びPTLの応答性は100倍以上向上し,fg~pgオーダーの検出が達成された.また,本法を用いて予試験的に健常成人の尿を分析したところ,PTのピークが明瞭に検出できた.健常人尿ではPTLが超微量なため検出できなかったが,CAH患児ではその量が増大することが予想され,本法のCAH検査への応用が期待される. 次に7DHCの多点認識には,そのs-cis-ジエンと反応する4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione (PTAD) を利用した.その結果,7DHCのESI-MS/MS応答性は70倍も向上し,検出限界は1 pgに達した.しかし,本法を新生児濾紙血分析に適用したところ,7DHCを検出することができなかった.この原因を精査したところ,7DHCは濾紙血中で不安定であり,濾紙血を用いてのSLOS検査は不可能なことが判明した.このことからSLOS診断については,今後,濾紙血ではなく,患児の負担なく採取可能な唾液を用いて検討することにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は,各先天性代謝異常症のバイオマーカー (PT,PTL及び7DHC) のESI-MS/MS応答性を大幅に向上させる多点認識ラベル化法の開発に成功し,さらに健常人の尿や濾紙血を用いた予試験も実施することができた.このことから,研究はおおむね順調に進展していると判断した.しかし,「研究実績の概要」に記したように7DHCについては,唾液中濃度測定を可能とするラベル化剤が必要であり,新規Cookson型試薬の開発が新たな課題となった.そのデザインと合成戦略までは23年度に終えたが,合成や評価は次年度に行う予定である. また,得られた成果の国内学会での発表という目標は達成できなかったが,次年度の早い時期にそれを行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
SLOSの病態解析を究極の目標として,当初の予定通り,セロトニンの多点分子認識ESIラベル化法を検討する. 一方,当初の予測に反し,濾紙血において7DHCが不安定で,これを試料とするSLOS診断が不可能なことが判明し,唾液を試料とする検査法の開発へと当初の計画を変更せざるを得なくなった.そこで次年度では,セロトニンの多点分子認識ESIラベル化法と並行して,唾液中の7DHC分析法の開発も中心課題として取り組む.唾液分析が可能なラベル化法が完成した時点で,国内学会において成果発表を行う. また,23年度の研究で開発したビシナルジオール及びs-cis-ジエンの多点分子認識ESIラベル化法の臨床・生体分析における実用性を評価し,様々なアプリケーションを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CAHやSLOSのバイオマーカーについては,十分な感度を示すESIラベル化法の開発に成功したが,7DHCの濾紙血での安定性が不十分であることが新しく見出され,その結果,唾液分析用新規ラベル化剤の開発という新たな課題も生まれた.そこで,23年8月頃より本課題に着手したが,東日本大震災に伴う節電のため,機器の使用が制限され,更には分析機器の故障も相まって8月から10月にかけて十分な実験が行えなかった.そのため,物品費が当初計画より少ないものになった.以上の理由により,23年度交付研究費の一部を24年度に使用,すなわち,唾液分析用新規ラベル化剤の開発を当初計画の24年度分の課題(セロトニンのラベル化法の開発)と合わせて遂行する.なお,これらの課題は同時並行で行うことが可能である.
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