2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリグルタミン病における小胞体分子シャペロン発現調節機構の解析と治療への応用
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23590094
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山岸 伸行 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60298685)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | GRP78 / ポリグルタミン病 / ナリンゲニン |
Research Abstract |
本研究課題では、ポリグルタミン病における小胞体分子シャペロンGRP78発現減少メカニズムを明らかにしてGRP78を利用したポリグルタミン病の新たな治療戦略の基盤を確立するとともに、新規GRP78誘導物質の探索を目的として以下の検討を行った。(1)GRP78発現減少メカニズムを明らかにするため、伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の発現に伴い減少するGRP78の発現がGRP78遺伝子の転写調節、翻訳、翻訳後制御のいずれのレベルで行われているのかについて検討した結果、mRNAレベルでの発現変化は認められず、タンパク質の分解レベルで生じていること、またこの過程にはユビキチン‐プロテアソーム系の関与が示唆される結果が得られた (J. Biochemistryに投稿中)。(2)GRP78プロモーター活性を指標として非ステロイド性抗炎症薬のインドメタシンおよびスリンダックスルフィドがGRP78の発現を誘導することを見出していたが、これらの薬剤処理が伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の凝集体形成を抑制できることが明らかになった。また、COX-2阻害活性のないスリンダックの代謝産物であるスリンダックスルホンでもGRP78発現は誘導されることから、インドメタシンおよびスリンダックスルフィドによるGRP78発現誘導にはCOX-2阻害活性は関与しないと考えられた (投稿準備中)。(3)GRP78のポリグルタミン病治療標的として応用するため、GRP78遺伝子のプロモーター活性を指標としてさらなるGRP78誘導物質を漢方薬抽出液から探索し、甘草抽出液から新たにフラボノイドであるナリンゲニンを見出した。また、ナリンゲニンは伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の凝集体形成を抑制できることが明らかになった (Biochem Biophys Res Commun.に投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の発現によるGRP78発現減少メカニズムについては、mRNAレベルではなく、タンパク質の分解レベルで生じていることなどが明らかになるなど、概ね計画通りに進展している。また、伸長ポリグルタミン病モデル細胞を用いたGRP78誘導物質の伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の凝集抑制効果については、当初の予定通りインドメタシンおよびスリンダックスルフィドがタンパク質の凝集を抑制することに加え、次年度以降に計画していた新規GRP78誘導物質の検索についても甘草抽出液からナリンゲニンを見出すなど計画以上の成果出ている。しかしながら、伸長ポリグルタミン鎖含有タンパク質の発現による細胞死に対するこれらの物質の効果が現在のところ明確でないなど一部進展に遅れがみられるところがある。このため相対的みればほぼ計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞系の研究結果に基づき、伸長ポリグルタミン病モデル動物に遺伝子改変によるGRP78の高発現および既存のGRP78発現誘導物質の投与により、同疾患の症状改善効果が認められるか検討し、得られた結果を取りまとめる。また、また、2型糖尿病モデル動物においてGRP78を含むいくつかの小胞体ストレス応答関連タンパク質発現の減少を見出しているため、これまでに見出したナリンゲニンなどのGRP78発現誘導物質が2型糖尿病モデル動物の高血糖を改善できるかについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナリンゲニンなどのGRP78発現誘導物質を疾患モデル動物に投与するため、今年度は実験動物の購入・飼育費用、飼料にこれらの物質を含有させた特殊飼料の作成依頼など約20万円使用する予定である。また、若干論文作成に遅延があるものの現在投稿中および投稿準備中の成果発表のために約15万円使用する。その他、細胞培養、生化学実験に使用する試薬・器具の購入費として約60万円使用する。
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