2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリグルタミン病における小胞体分子シャペロン発現調節機構の解析と治療への応用
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23590094
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山岸 伸行 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60298685)
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Keywords | GRP78 / 伸長ポリグルタミン病 / ナリンゲニン |
Research Abstract |
本研究課題では、遺伝性神経変性疾患に分類される伸長ポリグルタミン病における小胞体分子シャペロンGRP78の発現減少メカニズムを明らかにしてGRP78を利用したポリグルタミン病の新たな治療戦略の基盤を確立するとともに、新規GRP78誘導物質の探索を目的として検討し、以下の結果を得た。1)伸長ポリグルタミン病モデル細胞を用いてGRP78の発現と伸長ポリグルタミン含有タンパク質の凝集が逆相関にあること、伸長ポリグルタミン含有タンパク質の発現によるGRP78の発現減少がタンパク質の分解レベルで生じていることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun. 417, 527-533 (2012))。 2)GRP78遺伝子のプロモーター活性を指標として漢方薬および生薬抽出液をスクリーニングした結果、ナリンゲニンを見出し、伸長ポリグルタミン含有タンパク質の凝集を抑制することを明らかにした(Biological and Pharmaceutical Bulletin. 35, 1836-1840 (2012))。 3)これまでに2型糖尿病モデル動物においてGRP78を含むいくつかの小胞体ストレス応答関連タンパク質発現の減少を見出しているが、培養細胞レベルでGRP78誘導物質であるナリンゲニン処理がインスリンシグナルを増強することを見出した(Biochem Biophys Res Commun. 417, 364-370 (2012))。 伸長ポリグルタミン病に対する有効な治療法は未だ確立されていないが、本研究により小胞体分子シャペロンGRP78がその治療標的になりうることが明らかになってきた。また、GRP78発現減誘導物質であるナリンゲニンが細胞のインスリンシグナルの活性化を増強することから、糖尿病の治療への応用についても期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GRP78遺伝子のプロモーター活性を指標としたGRP78誘導物質の探索については、甘草抽出液からのナリンゲニンを見出すなど、ほぼ計画通りに進んでいる。また、今年度以降に予定していたモデル動物を用いた検討の準備も順調に進んでいる。さらに、2型糖尿病マウスにおけるナリンゲニンの高血糖に対する効果についても現在予備的な検討を行い、高血糖改善効果が期待できる結果が得られている。一方、ポリグルタミン病モデル細胞におけるGRP78発現減少は、当初主に転写レベルで起こっている可能性を考えて実験を計画していたが、タンパク質の安定性の低下の寄与が大きいことが明らかになったことから、現在プロテアソーム阻害剤の影響などを検討しており、若干の遅れが生じている。以上を総合するとおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞系の研究結果をもとに伸長ポリグルタミン病モデルマウスにおける小胞体分子シャペロン誘導物質であるナリンゲニンの治療を効果を検討する予定にしている。また、2型糖尿病マウスにおいてもGRP78の発現減少が認められることから、ナリンゲニンの高血糖に対する効果についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナリンゲニンなどのGRP78誘導物質を疾患モデル動物に投与するため、実験動物の購入費、維持飼育費、特殊飼料作成費として約35万円使用する予定である。また、細胞培養や生化学実験で使用する試薬・器具などの購入費として約60万円、その他青果発表のための論文作成や学会発表旅費に約15万円使用する予定である。
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