2012 Fiscal Year Research-status Report
生理活性天然物をシード化合物とした新規抗生物質の創薬研究
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23590139
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
広川 美視 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (40454582)
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Keywords | 抗生物質 / 多剤耐性菌 / リューロムチリン誘導体 |
Research Abstract |
昨年度、プリンカルボン酸とムチリン環をつなぐスペーサー部位を変換し抗菌活性及び物性の変化を調べ、より高活性な化合物の探索を主目的としたところ、脂溶性が高いリューロムチリン誘導体において良好な水溶性を持たせるためのスペーサー部分としてピペラジンが有効であるという結果に到った。そこで、今年度はスペーサー部分をピペラジンに固定し、プリンカルボン酸のヘテロ環を変換した化合物群の合成を行った。プリンカルボン酸は、3-[2-アミノ-6-[ピペラジン-1-イル] -9H-プリン-9-イル]プロピオン酸、3-[6-[3-アミノピロリジン-1-イル]-9H-プリン-9-イル]プロピオン酸を中心に、プリン環6位ヘテロ環を3-メチルアミノピロリジン、3-ジメチルアミノピロリジン、3-アミノメチルピロリジン、3-メチルアミノメチルピロリジン、3-ジメチルアミノメチルピロリジン、4-アミノピペリジン、およびアミノ基に保護基を導入し塩基性を抑えたタイプの化合物の合成を新たに行った。また、プリンカルボン酸とピペラジン環との結合様式をアミド結合からカルバメート結合への変換を試みた。種々反応条件を検討した結果、良好な収率で目的物を合成することに成功した。新規化合物の感受性菌に対するin vitro抗菌活性は、ほぼすべての化合物に強い抗菌活性が見られた。特に多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対する抗菌活性は、アミド結合をカルバメート結合に変換した化合物に高い抗菌活性が認められ、アミド体との比較において約10倍活性が増強していることがわかった。そこで、高い抗菌活性を持つ化合物において、人への応用が期待できるかどうかを調べるために、動物モデルに代わる評価系として使用されているカイコを用いたin vivo抗菌活性評価を依頼したところ、良好な治療効果を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プリンカルボン酸とムチリン環をつなぐスペーサー部位をピペラジン環に固定し、種々のプリンカルボン酸を導入し、合成化合物の黄色ブドウ球菌感受性菌におけるin vitro抗菌活性評価を行った。目的とする化合物群の合成は概ね順調であり、最終生成物を塩酸塩の固体として得ることもできた。新規化合物のin vitro抗菌活性評価の結果、ピペリジンチオエーテル体に匹敵する強い抗菌活性を持っていたが、多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対するin vitro抗菌活性では、1/10~1/5に減弱していた。一方、プリンカルボン酸とピペラジン環との結合様式をアミド結合からカルバメート結合に変換した化合物では、感受性菌に対する抗菌活性を保持しながら耐性菌に対する活性が増強していることがわかったため、カルバメート体の効率的合成法を検討することにした。目的とするカルバメート体を得るために、ヘテロ原子が置換した炭素1個のアルキルハライド試薬を用い種々のプリン化合物と弱塩基性~強塩基性条件化反応させたが、収率が30%以下と非常に低収率であった。しかし、マイクロウェーブ反応を利用することにより65~100%と中~高収率で目的物を得ることに成功した。その後の化合物合成においては、高収率で各行程が進行した。感受性菌及び多剤耐性菌に強い活性を持つ化合物においてカイコを用いたin vivo抗菌活性評価を依頼したところ、臨床から単離された黄色ブドウ球菌感受性菌(MSSA1)を指標としたED50値が、2.0~13 ug/g of larva と治療効果が期待できることがわかった。この値は、現在臨床の場で使用されている抗菌剤のED50 値がそれぞれvancomycin 0.3、minomycine 3.9、 linezolid 9であることと比較しても良好な値であることがわかる。
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Strategy for Future Research Activity |
スペーサー部分にピペラジン環を持ち、結合様式にカルバメートを持つ化合物が、黄色ブドウ球菌感受性菌(S.aureus FDA209P)及び多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対して強い抗菌活性を示すことがわかった。また、カイコを用いた試験からこれらの化合物は良好な治療効果が認められたが、ED50 とMICの比が、12~67と比較的大きな値を示し体内動態の面で少し問題が残ると推定された。その理由は、現在医療現場で使用されている抗菌薬のED50 /MIC(カイコ、MSSA1株)が10以下であり、医薬品として開発するためには10以下であることが望ましいと考えられるためである。従って、活性を保持しつつ体内動態を向上させるための修飾が必要となる。基本的にはプリン環6位のヘテロ環を更なる構造変換を行うものとする。構造変換としては、①ヘテロ環の側鎖アミノ基に有効な保護基を導入し、塩基性を低下させ、抗菌活性及び動態の変化を見る、②スペーサー部位の結合様式をカルバメートから他の結合様式に変換し、抗菌活性の動向を探る。但し、カルボニル基とプリン塩基との結合距離は炭素鎖2個分の距離が最適と考えているため、結合距離の延長をできるだけ避けた形で行うものとする。 新規合成化合物は、標準的な黄色ブドウ球菌感受性菌を指標にした抗菌活性評価を行い、有望化合物においては、外部機関による多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対する抗菌活性の測定およびin vivo抗菌活性の測定を依頼する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、24年度同様、有機合成化学による新規化合物の創製研究および一般的な感受性菌に対するin vitro抗菌活性測定試験、および有望化合物においては多剤耐性菌に対するin vitro抗菌活性測定評価とin vivo抗菌活性の評価を外部機関に依頼する予定である。 参加学会は、国際化学療法学会(米国デンバーで開催、発表予定)、メディシナルケミストリーシンポジウム、日本薬学会を予定している。 内訳は、新規化合物合成に使用する試薬等の費用30万円、学会参加費50万円、外部依頼費(謝金)50万円である。
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