2011 Fiscal Year Research-status Report
サラシノールをシードとする高活性スルホニウム塩型食後過血糖改善薬の合成と活性評価
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23590140
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田辺 元三 近畿大学, 薬学部, 准教授 (40217104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯松 敏江 近畿大学, 薬学部, 助手 (60088151)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | α-グルコシダーゼ阻害剤 / サラシノール / 3'-O-アルキル化 / サラシア / 構造活性相関 |
Research Abstract |
アーユルベーダ薬物サラシア由来のチオ糖スルホニウム塩、サラシノール(1)は糖尿病治療薬アカルボースやボグリボースに匹敵する強力なα-グルコシダーゼ阻害作用を示す化合物である。1が単離されて以来、構造活性相関研究が国内外で活発に行われ、これまでに数多くの類縁体が創生されてきた。側鎖部に関しては、1のポリオール側鎖部を伸長させることにより生じる水酸基の立体化学の異なるジアステレオマーが合成され、酵素と基質の水素結合による相互作用についてのみ検討されていた。ところが、近年の1と酵素との複合体のX-線結晶構造解析またはin silico docking studyにより、1の3’ 位硫酸エステル部は、酵素との親和性に関与せず、その近隣に位置する酵素のアミノ酸 Phe757, Tyr299, Trp406の疎水性残基によって圧迫を受け、酵素内での側鎖の安定化を妨げていることが示唆された。そこで、この欠点を補う化合物として数種の3'-O-アルキル化体、すなはち、メチル体 (2a)、エチル体 (2b)、トリデシル体 (2c) およびベンジル体 (2d) をデザインし、これらをチオ糖 (3) とエポキシド (4) のカップリング反応を鍵反応に用いて合成した。阻害活性評価の結果、メチル置換体2aのmaltase阻害は1のものとほぼ同等であったが、sucraseおよびisomaltase阻害がいずれも3倍程度増強されることが判明した。さらに、その他のアルキル体は、いずれも、1を凌ぐ強い阻害活性を示した。中でも、ベンジル置換体2dのmaltase, sucraseおよびisomaltase阻害活性は1に比べて著しく強力で、それぞれ、約 10、5、15 倍であることが判明した。以上のように、3'位酸素上のアルキル基と酵素との間に効果的な相互作用が存在すること明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べたように、23年度に合成した化合物が、いずれもリード化合物であるサラシノールのα-グルコシダーゼ阻害活性を上回り、サラシノールの3'位水酸基の疎水性化がα-グルコシダーゼ阻害活性の向上のための鍵修飾法として有効であることが証明された。中でも、ベンジル体のα-グルコシダーゼ阻害活性がサラシノールよりはるかに強力で、ワンオーダー低濃度で良好な阻害活性を発現することが判明した。このように、23年度の研究成果は、強力なα-グルコシダーゼ阻害剤創製を志向した本研究の着眼点が正しいことをよく支持した。したがって、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に合成したサラシノールの3'位メチル、エチル、トリデシルおよびベンジル置換体が、いずれもリード化合物であるサラシノールのα-グルコシダーゼ阻害活性を上回り、中でもベンジル体がサラシノールよりワンオーダー低濃度でα-グルコシダーゼを阻害することが判明した。これにより、α-グルコシダーゼと阻害剤の親和性の増強に関するスルホニウム塩の構造化学的特徴がおぼろげながら明らかになってきた。そこで次年度では、さらに詳細に構造活性相関を検討するために、まず、数種のアルキル置換体を合成し、3'位アルキル基の炭素鎖の長さおよび嵩高さの違いが活性に与える影響について検討する。さらに、ベンジル体については、フェニル基上に置換基を導入し、置換基が活性に与える影響についても併せて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の目的を達成するために、23年度の研究により大量合成が完了している反応中間体を用いて、3’-O-ペンチル、へプチルおよびネオペンチル置換スルホニウム塩などの合成を行う。また、メチル、塩素、臭素、トリフルオロメチルおよびニトロ基などで置換された3’-O-ベンジルスルホニウム塩類の合成も併せて行ない、合成した化合物のα-グルコシダーゼ阻害活性について評価する。
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