2012 Fiscal Year Research-status Report
サラシノールをシードとする高活性スルホニウム塩型食後過血糖改善薬の合成と活性評価
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23590140
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田辺 元三 近畿大学, 薬学部, 准教授 (40217104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯松 敏江 近畿大学, 薬学部, 助手 (60088151)
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Keywords | αーグルコシダーゼ阻害剤 / サラシノール / 3'-O-アルキル化 / サラシア / 構造活性相関 |
Research Abstract |
アーユルベーダ薬物サラシア由来のチオ糖スルホニウム塩、サラシノール(1)は糖尿病治療薬アカルボースやボグリボースに匹敵する強力なα-グルコシダーゼ阻害作用を示す化合物である。1が単離されて以来、構造活性相関研究が国内外で活発に行われ、これまでに多くの類縁体が創生されてきた。近年の1と酵素との複合体のX-線結晶構造解析またはin silico docking studyにより、1の3'位硫酸エステル部は、酵素との親和性に関与せず、その近隣に位置する酵素のアミノ酸 Phe757, Tyr299, Trp406の疎水性残基によって圧迫を受け、酵素内での側鎖の安定化を妨げていることが示唆された。これまでに我々は、1の親水性の高い硫酸エステル部を疎水性のベンジル基に置換した類縁体 2 を合成し、ベンジル置換体が1を凌ぐ強力なmaltase阻害活性示すことを明らかにしている。そこで、本年度では、2 の芳香環上にメチル基、クロロ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などをもつスルホニウム塩 (3)を合成し、その阻害活性について評価した。いずれの化合物もサラシノール (1) を凌ぐ強力な maltase および sucrase 阻害活性を示すことが判明した。また, 置換基の種類に関わらず, オルト位に置換基をもつスルホニウム塩が、相当するメタおよびパラ置換体に比べ、maltase および sucrase に対して強い活性を示す傾向にあることも判明した. 中でも o-ニトロ置換体の maltase 阻害活性は, in silico 計算の予想を上回り、著しく増強され salacinol (1) の約40倍の活性に、また、ボグリボースの約 10 倍に達した。さらに、同化合物の sucrase に対する阻害能も顕著に増強され, 1 の40倍の活性を示すことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べたように、24年度に合成したリード化合物、3-O-ベンジル体の芳香環の置換様式が阻害活性に与える影響を検討した。その結果、いずれの化合物もサラシノールを凌ぐ強力な maltase および sucrase 阻害活性(10倍~40倍)を示すことが判明し、さらに、オルト位に置換基をもつスルホニウム塩が、相当するメタおよびパラ置換体に比べ、強力な活性を示す傾向にあることとを明らかにした。特にo-ニトロ置換体は, サラシノールの約40倍の maltase および sucrase 阻害作用を示し、これまでに合成された関連スルホニウム塩の中で最も強力な阻害剤であることが判明した。このように、今回、リード化合物の置換基効果を検討することにより、活性増強に係る新たな知見を見出すことに成功し、この知見は、さらなる高活性の新規グルコシダーゼ阻害剤の創製に有用な知見が得られたものと考えている。したがって、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に合成した最も強いα-グルコシダーゼ阻害活性を示すo-ニトロ置換体は、ニトロ基を有し、毒性面において懸念がもたれる。そこで、次年度では、この置換基に代わる新たな疎水性置換基の探索を目的として、数種のアルキル置換体を合成し、3'位アルキル基の炭素鎖の長さおよび嵩高さの違いが活性に与える影響について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] In silico design, synthesis and evaluation of 3′-O-benzylated analogs of salacinol, a potent α-glucosidase inhibitor from Ayurvedic traditional medicine “Salacia”2012
Author(s)
G. Tanabe, S. Nakamura, N.Tsutsui, G. Balakishan, W. Xie, S.Tsuchiya, J. Akaki, T. Morikawa, K. Ninomiya, I. Nakanishi, M.Yoshikawa, O. Muraoka
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Journal Title
Chem. Commun.
Volume: 48
Pages: 8646-8648
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Salacinol をシードとするスルホニウム塩型α-グルコシダーゼ阻害剤の in silico 設計, 合成及び評価
Author(s)
田邉元三, 中村真也, 吉長正絋, 筒井 望, Gorre Balakishan, 赤木淳二, 森川敏生, 二宮清文, 仲西 功, 吉川雅之, 村岡 修
Organizer
第54回天然有機化合物用論会
Place of Presentation
東京農業大学世田谷キャンパス(東京)
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[Presentation] Salacinol をシードとするスルホニウム塩型α-グルコシダーゼ阻害剤のin silico 設計, 合成及び評価
Author(s)
田邉元三, 中村真也, 國方雄介, 土屋聡史, 吉長正絋, 筒井 望, 赤木淳二, 森川敏生, 二宮清文, 吉川雅之, 仲西 功, 村岡 修
Organizer
第19回天然薬物の開発と応用シンポジウム
Place of Presentation
大阪大学(大阪)
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[Presentation] In Silico Design, Synthesis and Evaluation of 3′-O-Benzylated Analogs of Salacinol, a Potent α-Glucosidase Inhibitor from Ayurvedic Traditional Medicine “Salacia”
Author(s)
Genzoh Tanabe, Shinya Nakamura, Nozomi Tsutsui, Masahiro Yoshinag, Yusuke Kunikata, Junji Akaki, Toshio Morikawa, Kiyofumi Ninomiya, Isao Nakanishi, Masayuki Yoshikawa, Osamu Muraoka
Organizer
The Twelfth International Kyoto Conference on New Aspect of Organic Chemistry
Place of Presentation
リーガロイヤルホテルKYOTO(京都)
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