2012 Fiscal Year Research-status Report
環境内発がん性N-ニトロソ化合物の新規活性化経路の解明
Project/Area Number |
23590152
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
望月 正隆 東京理科大学, 薬学部, 教授 (10072414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 圭子 東京理科大学, 薬学部, 講師 (00271247)
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Keywords | N-ニトロソジアルキルアミン / 代謝活性化 / フェントン試薬 / ヒドロキシルラジカル / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
N-ニトロソ化合物はヒト体内でも生成する発がん物質であり、ヒトがんの原因として重要な位置を占める。N-ニトロソジアルキルアミンはシトクロムP450によってα-水酸化体を形成し、DNAをアルキル化することが明らかになっている。酸化的代謝モデルとして修飾Fenton試薬 (Fe2+-Cu2+-H2O2) を用いてN-nitroso-N-methylbutylamine (NMB) を処理したところ変異原性を発現し、直接変異原として5-methyl-5-nitro-1-pyrazoline 1-oxide (mutagen X) を同定したことから、α-水酸化体以外の活性体の存在を明らかにした。さらに、アルキル側鎖をブチル基からペンチル基に変換したN-nitroso-N-methylpentylamine (NMPe) を用いて、NMBと同様に変異原を単離したところ、5-ethyl-5-nitro-1-pyrazoline 1-oxide (mutagen Z) が生成することを明らかにした。しかし、mutagen Xとmutagen Zについて、反応液の変異原活性への寄与を検討したところ、より強い変異原物質の存在が明らかになった。 本研究では、NMBの反応抽出物からmutagen X以外の直接変異原を単離すると同時に、変異原の構造を推定して別途で合成することで、変異原性の最も高い活性体の構造決定を目的とした。また、NMBの類縁体であるN-nitroso-N-methylpropylamine (NMP) を修飾Fenton試薬で処理したときに生成する変異原を単離し、構造決定を試みた。一方、NMBから同定したmutagen X やmutagen Zの変異原性発現に至る経路の解明を目的とし、pyrazoline骨格をもつ類縁体を合成し、変異原性発現に及ぼす構造の影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一酸化窒素の共存下、NMBを修飾Fenton試薬 (Fe2+-Cu2+-H2O2) で処理し、有機溶媒で抽出した後、シリカゲルカラムによる精製と変異原性試験を繰り返したが、分離操作を繰り返すことで変異原の収量および活性も低下し、最も活性の高い変異原の単離に至っていない。また、推定活性体を1-nitropropeneとニトロイミン類による付加環化により別途合成しているが、目的物は得られていない。いずれも変異原が不安定であることが原因である。 一方NMPについても、生成する変異原の単離を試みた。NMPを一酸化窒素の存在下において修飾Fenton試薬で処理し、有機溶媒で抽出して得られた粗抽出物について、カラムクロマトグラフィーで分画した後に変異原性試験を繰り返すことで、最も高い変異原活性をもつ分画を得ることができた。その分画の機器データを測定して構造決定を試みたところ、生成した変異原がmutagen Xと同様に環構造を有することが分かった。 Mutagen Xやmutagen Zの変異原性発現に至る経路の解明では、種々のpyrazoline骨格を有する化合物を合成して変異原性を試験し、mutagen Xやmutagen Zの活性発現に必要な部分構造を明らかにした。その結果、活性発現にはpyrazoline環の窒素原子がオキシド化されていることが重要であり、さらにオキシド化される窒素原子の位置も活性発現に影響を与えていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
変異原の単離では、大スケールで反応を遂行し、シリカゲルカラムによって手際よく分離した後、分取HPLCを組み合わせることで、短時間での変異原の単離を目指す。推定中間体の合成では、化合物に長鎖アルキル基や芳香環を導入することで、合成しやすい化合物とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬やガラス器具などの消耗品を購入する。
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