2012 Fiscal Year Research-status Report
神経堤細胞発生をモデルとした上皮‐間葉系転換(EMT)メカニズムの解明
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23590233
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
本橋 力 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40334932)
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Keywords | 上皮-間葉系転換 / 神経堤細胞 / ES細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「EMTプロセスの典型的なモデルである神経堤細胞発生を解析することによりEMT現象に関与する分子、発生メカニズムを解明する」ことである。この目的により、神経堤細胞に発現する転写因子Sox10を蛍光タンパク質で標識したES細胞とマウスを作成し、EMT現象を試験管内、生体の両面で観察できる実験系を確立した。 平成24年度においては、EMT現象に関連あると思われる60個の転写因子の胎仔での遺伝子発現パターンを詳細に調べ、さらに文献調査によりそれらの機能を調べ、EMT現象との関連性を推測して、解析すべき候補として33個の転写因子を選び出した。これらの転写因子全てを試験管内でのEMT誘導系においてレトロウィルスを用いて遺伝子過剰発現させたところ、Sox10の発現が上昇することが観察され、EMT現象が亢進されている可能性が示唆された。現在、これらの過剰発現が正確にEMT現象の亢進につながっているかどうかを詳細に解析するとともに、遺伝子抑制系の実験等を通して、これらの転写因子のEMT現象での機能解析も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに行った予備実験、実験条件の再検討で得た結果に基づき、候補遺伝子を試験管内でのEMT現象にレトロウィルスを用いて過剰発現を行い、EMT亢進の有無をSox10の発現を指標にフローサイトメーターで観察・解析を行った。33個の転写因子全てを過剰発現させると、試験管内EMT現象においてSox10の発現が有意に上昇することが観察された。このことは、33個の転写因子がEMT現象の亢進に関与している可能性を示唆している。次年度では、これらの遺伝子とEMT現象との関連性を詳細に解析するとともに、候補遺伝子のスクリーニング実験を行い、EMT現象の新たなるマスター転写因子の同定を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Sox10発現の亢進が観察された33個の転写因子に関して、さらに試験管内EMT現象への遺伝子過剰発現およびsiRNA等を用いた遺伝子抑制を行い、それに伴う遺伝子発現パターン・形態変化を詳細に調べ、EMT現象との関連性や機能の解析を行う。また、33個の転写因子を個々に過剰発現・抑制実験を行い、実際にEMT現象に寄与している候補遺伝子のスクリーニングを行い、EMTのマスター転写因子の同定につなげる。試験管内での実験の後、生体由来の神経堤細胞発生現象でも同様の実験を行い、候補転写因子の機能を解析し、EMT分子メカニズムの解明につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度において、予備実験、実験条件の再検討を行ったため、当初予定していた候補遺伝子の機能解析まで至らなかった。そのため、計上していた予算を平成25年度に繰り越し、これに使用する。次年度では平成23-24年度に確立した実験系を駆使して、EMTに関連あると推測される候補転写因子の機能の解析をすすめる。候補転写因子の機能の解析では、細胞への遺伝子導入システム関連物品(遺伝子導入試薬、電気的遺伝子導入機器)、レトロウィルス発現関連試薬、遺伝子抑制試薬の購入に経費を使用する予定である。また、生体由来のEMT現象での遺伝子解析として、細胞培養関連試薬、培地、マウス飼育費用等も計上している。試験管内実験および生体由来の実験に共通して用いるフローサイトメーター関連では、各種蛍光抗体を購入する予定である。
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Research Products
(6 results)