2011 Fiscal Year Research-status Report
ドパミンニューロンの開口放出とシナプス小胞の動態制御におけるシンタキシンの役割
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23590307
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
笹川 展幸 上智大学, 理工学部, 教授 (20187107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | exocytosis / syntaxin / chromaffin cell / amperometry |
Research Abstract |
シンタキシン1Aノックアウト(KO)マウスおよびR151Gシンタキシン1A(CaMKIIとの結合能欠損)ノックイン(KI)マウス由来の副腎クロマフィン細胞をターゲットとし、微小炭素線維電極を用いたアンぺロメトリィー法により、開口分泌キネティクス指標およびスパイク出現頻度の刺激に伴う時間的変化をwild type(WT)マウス由来細胞からのデータと比較検討することにより、特にアミン系神経伝達に重要なシンタキシン1A分子の役割を解析した。WT,KO,KI由来の細胞において、高KCl およびアセチルコリン刺激による開口頻度はどちらも濃度依存的に増加しそれぞれ60mMと30μMで最高値を示した。WTと比べて、開口頻度はKI、KOともに有意な減少がみられた。 次に各種刺激に伴う細胞内遊離カルシウム濃度変化を検討した結果、WTとKI、KOの両者の間に、有意な変化はなかった。この結果はKI、KOでの開口頻度の抑制はカルシウム流入以降のステップに原因があることを示唆している。 さらに、開口分泌過程のキネティクスを解析する目的で、得られたスパイクのパラメータ(スパイクの高さ・積分値:分泌量の指標、スパイクの最大値に達するまでの時間:開口速度の指標、最大値から基線に戻るまでの時間:拡散速度の指標)を設定し、WT、KI、KO由来の細胞から得られたそれぞれの指標を比較した。KI,KOにおいてKClの30mM、AChの30μMの刺激時に分泌量と拡散速度の指標において減少傾向が認められた。 以上の結果から、シンタキシンIAは刺激時の開口頻度の調節に重要な役割を果たしていること、また開口分泌過程のキネティクスにも役割を演じている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はトランスジェニック(R151Gシンタキシン1Aノックイン、シンタキシン1Aノックアウト)マウス由来の副腎髄質クロマフィン細胞と黒質中脳由来のドパミンニューロンの両者を用い、アンぺロメトリィー法による開口頻度および開口過程のキネティクス解析法で、開口放出におけるシンタキシンの役割につき解析を進める予定であっつたが、黒質中脳由来のドパミンニューロンの順調な供給が困難であったため、神経系細胞の優れたモデルである副腎髄質クロマフィン細胞での解析を優先的に進めた。現在5-8匹のマウスからドパミンニューロンの調製を行っているが、細胞収率が低くアンぺロメトリィー法による単一細胞をターゲットとした検討においても十分とはいえない状態である。ドパミンニューロンの順調な供給のために、トランスジェニックマウスの十分な供給、細胞調製と培養法の改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ドパミンニューロンの順調な供給のために、トランスジェニックマウスの十分な供給、細胞調製と培養法の改良を行う予定である。(2)開口放出過程(ポアー形成機構からフルエクソサイトシス)などの各ステップおよびkiss and runの機構に注目しのシンタキシンによる調節機構の詳細な解析も加えて行う予定である。副腎髄質クロマフィン細胞での、開口頻度を指標にした検討では十分な例数も得られ、有意義なデータも得られつつある。 開口放出過程のキネティクス解析では、WT由来細胞とKI由来細胞で得られたデータを比較すると、変化の傾向は認められるが、統計的に有意な結果が得られていないため、例数を増やし検討を続けたい。(3)クロマフィン細胞およびドパミンニューロンの開口分泌調節、分泌顆粒の細胞内動態のダイナミクス調節における、シンタキシンに代表されるSNARE蛋白質、イノシトール多リン酸、および蛋白リン酸化酵素C (PKC)各アイソフォーム などによる調節機構にも注目して検討を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費:微小炭素繊維電極、培養用品、生化学的試薬、動物等の実験材料アンペロメトリー法による開口分泌測定には微小炭素繊維電極は必須の電極であり、均一な感受性を持つ電極の自作は困難である為、既製品を購入することが本研究遂行の上に是非とも必要である。その他、培養用品の購入、培養試薬・プラスミド作成・遺伝子導入試薬等の、生化学的試薬は必須である。 副腎髄質クロマフィン細胞やドパミンニューロン調整に必要なマウス等。
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