2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内シグナルと代謝物リガンドによる核内受容体活性制御
Project/Area Number |
23590324
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
白木 琢磨 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (10311747)
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Keywords | 核内受容体 / 蛋白質分解 / ユビキチン / セロトニン |
Research Abstract |
セロトニンは中枢・末梢の両方で作られているが、その合成酵素のサブタイプが異なる。炎症性腸疾患の患者において末梢セロトニン量が変化することが言われている。末梢セロトニンの合成、取り込み、分解に関わる因子群を薬理学的・遺伝学的操作をすると、肥満や骨密度の減少、心疾患が引き起こされる。これらの病態は一部のPPARγ アゴニストで報告されている副作用と類似している。そこで本研究では以下の視点で研究を行っている。 末梢セロトニンの作用についてセロトニン代謝物の関与を明らかにするために、セロトニン代謝の律速酵素であるモノアミンオキシダーゼ(MAO)とPPARγの連動を解析した。その結果、内在性にPPARgを発現するヒトマクロファージ様細胞THP1において、セロトニン投与によりPPARg標的遺伝子の発現上昇は、セロトニン取り込み阻害剤により消失した。従って末梢セロトニンはマクロファージに取り込まれた場合、MAOにより代謝されPPARgを活性化する事が明らかとなった。 末梢セロトニンはセロトニン受容体を介したシグナル伝達も行う。細胞内シグナル伝達のなかでもセリン・スレオニンキナーゼによりリン酸化されたPPARgはPin1と結合し、ユビキチン依存性の蛋白質分解制御の阻害を受けることで安定化することがわかった。 一方、リン酸化されていないPPARgやリン酸化を受けない様に点変異を導入したPPARgは非常に不安定であることがわかった。現在、リン酸化されていないPPARgを認識し、ユビキチンープロテアソーム系の誘導を介在する因子を探索中であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞内シグナルでリン酸化を受けたPPARgはユビキチン化の阻害を受け、安定性が増すことがわかった。しかし、蛋白質の量が増加するにもかかわらず、転写活性という点ではリン酸化は抑制性に働くことがわかった。この結果はこれまで知られている蛋白質安定性による活性制御機構と大きくメカニズムが異なることを意味する。そこで、蛋白質の代謝回転が活性に重要であるというモデルを立てて研究を行っている。その過程で、リン酸化されていないPPARgを認識し、ユビキチンープロテアソーム系へと誘導することで、転写活性を上げる因子の存在が想定された。そこで、現在この因子の同定を優先したため、申請時において進める予定になっていた、活性の視覚化、修飾の視覚化という技術開発が進んでいない。最終年度に技術開発という大きな課題を残してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時には東北大学に在籍していたため、所属研究室の研究機器を利用できたが、平成23年度から近畿大学で独立し、すべての研究を自分の研究室でセットアップする必要があった。既に実験系の出来ている実験を優先的にセットアップしたため、当初の予定から進捗が遅れており、新しい技術開発に関する部分が最終年度に残ってしまった。幸い、研究室のセットアップもほぼ終了し、必要な実験は安定して行う事が出来るようになった。そこで、最終年度には、活性の時間的・空間的変化の視覚化というイメージング技術の開発に挑戦し、これまでに生化学的に検討してきた核内受容体蛋白質安定性と活性の制御機構について結論を導き出し、論文発表へとつなげたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イメージング技術の開発という点から、蛍光プローブ、抗体を新たに購入することが必要となる。細胞培養、生化学用試薬、分子生物学用試薬は引き続き一定量の消費が見込まれるため、随時購入する。また、メカニズムの検証に際しては様々な阻害剤を用いた薬理学的検証を予定しているため、シグナル伝達に関わる酵素の阻害剤、受容体の阻害剤を新たに購入する予定である。
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Research Products
(7 results)