2012 Fiscal Year Research-status Report
転写因子IRF8とcAMP経路に共通するマクロファージ分化基本分子機構の解析
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23590343
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
西山 晃 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80589664)
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Keywords | 血球分化 / 転写因子 / 網羅的解析 |
Research Abstract |
造血系細胞を含む、多細胞生物の細胞分化においては、各系譜に特異的な転写因子によってしかるべき下流遺伝子の転写の活性化、あるいは抑制が行われていることが必須であり、そしてその制御機構が破綻するとがんなどの疾患を引き起こしうる事が知られている。インターフェロン系転写因子IRF8はマクロファージを含む複数の血球細胞系譜において細胞分化を促進する。一方、その発現は慢性骨髄性白血病(CML)患者の血球細胞にて著減しており、またその欠損マウスはCML様病態を示す事から、IRF8がCML病態の重要な制御因子である可能性が示唆されていた。本研究においては、IRF8の機能解析を通じて血球系の分化機構を明らかにし、ひいてはIRF8をバイパスする白血病治療法の可能性を探ることを目標としている。 平成23年度は、マクロファージ分化の分子機構を解析する目的で、IRF8遺伝子欠損マウスより樹立したミエロイド前駆細胞株Tot2細胞のin vitroマクロファージ分化系を用い、複数の経路から誘導したマクロファージの網羅的な遺伝子発現解析を行った。 平成24年度においては、次世代シーケンサーを用いたChIP-seq法によりIRF8のゲノム上の結合部位を網羅的に解析し、さらにはマイクロアレイとの統合解析をにより、IRF8を起点としたマクロファージ分化における転写因子カスケードを同定した。 今後、これまでに同定されてきた候補遺伝子の機能解析、プロモーター上流の制御因子の解析を通じて、マクロファージ分化への関与を検討し、さらにはIRF8をバイパスするし白血病治療に応用可能な分化経路の探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、IRF8を介したマクロファージ分化の分子機構を解析する目的で、IRF8遺伝子欠損マウスより樹立したミエロイド前駆細胞株Tot2細胞のin vitroマクロファージ分化系を用い、複数の経路から誘導したマクロファージの網羅的な遺伝子発現解析を行った。Tot2細胞を成熟マクロファージに分化誘導できることが判明している転写因子IRF8およびそのファミリー分子であるIRF4、IRF8を導入することなくTot2細胞を成熟マクロファージに分化誘導できるサイクリックAMP経路を活性化する薬剤、さらには新たに同定した新規の転写因子による分化誘導系を解析した。マイクロアレイによる遺伝子発現解析により、これらの複数の経路に共通して発現が変動する遺伝子群を同定した。 平成24年度においては、マクロファージ分化に関わる遺伝子群の抽出をより効率よく進めるために、マイクロアレイによる遺伝子発現解析だけではなく、ChIP-seq法を用いてIRF8の標的遺伝子の同定を試みた。これらを統合解析により、IRF8の標的遺伝子のみならず、マクロファージ分化に関わる遺伝子、さらにはIRF8が関与する遺伝子ネットワークの理解が進んだ。特にIRF8を起点とした転写因子カスケードを同定する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、主に2つの方向性で研究を継続する予定である。一つは、これまでに得られたマクロファージ分化に関わると考えられる遺伝子の機能解析、もう一つはcAMP経路の下流分子の同定である。前者については、これまでにマイクロアレイで得られた遺伝子群のうち、ontology解析や、過去の報告を基にしたマクロファージ分化に関わる転写因子を進め、ChIP-seqの解析結果と統合することにより、精度の高い遺伝子リストを作成する。特にChIP-seqによるエンハンサー解析が、精度の高いリスト作製に非常に重要になると予想している。候補の遺伝子については、発現ユニットをTot2細胞に導入し、マクロファージ分化能を検討する。可能であれば、IRF8による分化誘導時にRNAiにより目的の転写因子の発現を抑制し、分化誘導が阻害されるかを検討する。後者については、cAMP経路の下流の分子に特異的なcAMP派生物や阻害剤を用いて、マクロファージ分化の誘導に関わるcAMP依存的シグナル伝達系を同定する。また、前述のマクロファージに関わる遺伝子の候補群についても、プロモーター解析を行い、CREを含むcAMP経路の下流と考えられる遺伝子を抽出し、同様に遺伝子導入により、その効果を評価する。効果が得られた遺伝子については、生体において実際にマクロファージ分化に関与する事を、遺伝子導入lineage陰性細胞のマウスへの輸注実験により確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)