2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590405
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
一宮 慎吾 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (30305221)
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Keywords | 抗体産生 / 濾胞ヘルパーT細胞 / POU2AF1 / ヒト免疫組織 / 胸腺 / 扁桃 / TIGIT / CD1D |
Research Abstract |
エフェクターヘルパーT細胞の解析が進み、抗原特異的な抗体の産生過程における濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の重要性が明らかとなってきた。一方でヒトTfh細胞の機能調節機構については未だ不明な点が多く、この研究領域の発展が望まれている。 本研究の目的はヒトTfh細胞の新たな調節機構を探り、もって免疫関連疾患の病態解明や臨床応用に向け研究を展開することにある。初年度はヒト胸腺や扁桃組織からリンパ球サブセットを単離して、Tfh細胞の遺伝子発現プロファイルを検証した。その結果、Tfh細胞には細胞表面分子としてTIGITが発現し、また遺伝子発現調節因子であるPOU2AF1が高発現していることが明らかとなった。TIGITは抑制性のITIMドメインを有する分子でありTfh細胞のネガティブ調節因子として位置付けられる。実際、B細胞との共培養実験を行うと、SEBスーパー抗原の存在下で抗TIGIT抗体を添加した場合、Tfh細胞に対するB細胞応答が増強した。またPou2af1遺伝子欠損マウスに外来抗原のモデルであるヒツジ赤血球を投与すると、脾臓中のTfh細胞の割合がコントロール群に比べて明らかに増大していた。このことから、POU2AF1はTfh細胞の細胞数を保つ役割があると考えられた。扁桃関連疾患でTfh細胞におけるPOU2AF1の発現量を調べてみると、反復性扁桃炎よりも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)においてPOU2AF1の発現量が増強していた。OSASは扁桃肥大が有意に生じているが、昨年度の結果と併せてPOU2AF1の誘導過多によるTfh細胞数の増大が一因であると考えられた。また興味深い結果としてCD1Dテトラマーが濾胞ヘルパーT細胞の全てに反応する実験事実が得られており、我々の解析からTfh細胞はいわゆるNKTfh細胞と機能をシェアするかあるいは同一の細胞である可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究計画として、ヒトTfh細胞の細胞表面マーカーの解明とともに、機能制御機構の解析をかかげていた。前者としてTIGITやCD59を新たに見出し、また後者としてはPou2af1遺伝子欠損マウスの解析に着手することができた。臨床検体の検討に関しては、気管支喘息患者の末梢血液におけるTfh細胞の検討を主に行っており、アレルゲンテスト陰性の健常人に比べてTfh細胞数が多い傾向が認められている。しかしながら、IgA腎症などその他の免疫関連疾患におけるTfh細胞の解析はやや停滞していると言わざるを得ない。その原因として症例数が少ないことがあげられるため、関連病院を増やすなど対策を講じる必要性を感じている。一方で、B細胞サブセットに広く発現するCD1DはTfh細胞に結合する結果が得られたことから、CD1Dは抗原特異的な液性免疫の活性化機構に関連していると考えられる。臨床検体の解析がやや遅れているものの、ヒト免疫細胞を直接扱う利点からCD1Dのような発展的な研究シーズが産まれているところも勘案し、今年度は概ね順調に進展していると位置付けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度より申請者は本学医学部フロンティア医学研究所免疫医科学部門を担当することとなったため、これまでの研究環境とは大きく異なり研究をより推進し易い学内施設へ移る。最終年度にあたりこうした利点を生かして研究がさらに展開されるよう手技や内容を深めながら、ヒト抗体産生プログラムの解明と疾患制御への応用に向けて本研究を継続して行う予定である。平成24年度はカリキュラム改正に伴う保健医療学部の講義数がかなり多かった ため、学部教育にかける時間が思いの外多かった。このため順調に研究が推移したものの、目標とする段階への到達までには十分至らなかった。懸案であったウイルスベクターを用いたPOU2AF1やBCL6の遺伝子導入の実験条件が整いつつあり、胸腺や扁桃組織に存在するTh0細胞に遺伝子を導入してTfh細胞に関する表現型や機能について検討したい。また昨年度は気管支喘息患者の末梢血におけるTfh細胞の解析を行ったが、今年度はさらに症例を重ねてデータを積み上げて、Tfh細胞の臨床的意義を確立したいと考えている。さらにCD1Dの解析系を加えることによって、ヒトTfh細胞が介する抗体産生機構の本質に迫りたい
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の研究予算は、前年度と同様に研究試薬などの消耗品費に用いる予定である。つまり細胞培養試薬、遺伝子導入試薬、抗体類、さらにフローサイトメトリーやウエスタンブロッティング、遺伝子解析に使用する検出試薬も含まれる。ヒト組織を用いた研究はいつ手術材料がくるかわからない場合もあるため、試薬の調整などの事前準備が欠かせない。試薬の種類によっては到着までに数週間かかることもあって、限られた時間の中で効率よく結果を得るためにはよく吟味し考えて研究計画を立て、貴重な予算を執行しなければならない。そう考えて研究を行ってきており、引き続き研究費が有効に活用されるよう望みたい。
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Research Products
(10 results)