2013 Fiscal Year Annual Research Report
マラリアにおける樹状細胞分化異常と転写因子IRF4/IRF8の発現抑制の解析
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23590492
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
市野 素英 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60271368)
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Keywords | マラリア / 樹状細胞 / 転写因子 |
Research Abstract |
研究初年度では、マラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA)感染モデルマウスを用いて、マラリアにおける樹状細胞サブセットを詳細に解析した。そして、感染マウスの脾臓樹状細胞サブセットが非感染マウスと比べて異なる集団像を示し、また抗原提示能の低下していることを見出した。樹状細胞分化に重要な役割を果たす転写因子IRF4/IRF8の発現を調べると、感染マウスの脾臓樹状細胞では非感染マウスに比べて低下していた。以上から、マラリアで樹状細胞サブセットの分化異常が見られること、そしてこの分化異常がIRF4/IRF8の発現低下と関連することを明らかにした。 研究2年度では、樹状細胞サブセット分化異常は、マラリア原虫感染赤血球が樹状細胞の前駆細胞に作用することによって引き起こされるのではないかと考え、とくにIRF8発現に着目して検討した。ところが意外なことに、マラリア原虫感染マウスの骨髄前駆細胞におけるIRF8発現の低下は認められず、マラリア原虫感染赤血球は、前駆細胞が樹状細胞へ分化決定した後に作用し、IRF8の発現を低下させることが示唆された。 研究最終年度では、骨髄細胞にIRF8を強制的に発現させ、マラリア原虫感染赤血球存在下で、樹状細胞が正常に分化できるか検討した。すると驚くべきことに、IRF8 発現骨髄細胞の樹状細胞への分化が、マラリア原虫感染赤血球の存在によって、むしろ積極的に抑制されることが明らかとなった。マラリア原虫排除には樹状細胞が重要であるので、マラリア原虫はIRF8を発現する樹状細胞の分化・機能を抑制することで免疫回避していると考えられる。本研究結果は、IRF8によって発現が誘導される分子がマラリア原虫感染赤血球の標的である可能性を強く示唆するもので、今後この分子を明らかにし、マラリアの新たな病態理解・治療に結びつけたていきたい。
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