2011 Fiscal Year Research-status Report
トキソプラズマ原虫に特異的なGTPーPKの基質供給経路の解明
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23590494
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浅井 隆志 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30159355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 美穂子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50445201)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 寄生原虫 / トキソプラズマ / ミトコンドリア / ピルビン酸キナーゼ / ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ / 大腸菌での発現 / アピコプラスト / 細胞内小器官での局在 |
Research Abstract |
トキソプラズマのタキゾイト型虫体には、他の生物には存在しない特異なGDP依存性のピルビン酸キナーゼが存在する。しかもこの酵素は虫体のミトコンドリアとアピコプラストに局在している。通常殆どの生物のミトコンドリアにピルビン酸キナーゼは存在しない事から、トキソプラズマのGDP依存性のピルビン酸キナーゼがどの様な働きをしているのかは現在不明である。我々はこの酵素の生理的役割を解明するために、まず酵素の基質であるホスホエノールピルビン酸(PEP)がどの様に供給されるのかを明らかにしようと考えた。そこで最もPEPを供給可能な酵素として、トキソプラズマのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)について検討した。 トキソプラズマのPEPCKには610個のアミノ酸から成る酵素(S)と677個のアミノ酸から成る酵素(L)が予想されている。S酵素はタキゾイトのmRNAからは検出されなかった。また系統樹による遺伝子解析の結果、S酵素はPEPCKの機能を失っている可能性が示唆された。この事からS酵素は研究の対象から除外した。両酵素ともATPを基質にするPEPCKに分類され、他のコクシジューム原虫のPEPCKと非常に近い関係であった。一方L酵素は容易にタキゾイトmRNAから検出された。L酵素はpGEX, pET, pCold発現ベクター系で活性のある酵素の発現が検討された。その結果、pColdで発現された酵素のみで活性のある酵素が得られた。現在大量培養による単一酵素の精製について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トキソプラズマのPEPCKには(S)と(L)の二つのタイプの酵素が知られている。当初は、二つのタイプの活性のある酵素を得る事を目的にしていた。しかしS酵素はmRNAより得る事ができず、目的の達成に至らない事が危惧された。だが系統樹解析の結果、S酵素はPEPCKとしての機能を持たない可能性が考えられ、研究の対象から除外する事が最適であると判断された。その結果、L酵素の解析のみで研究の目的は達成されると考えられる。 L酵素の発現にはpGEXとpET系のベクターで活性のある酵素が得られると考えていた。しかし両系とも大量発現が可能であったが、インクルージョンボデイでの発現のため可溶性で活性のある酵素を得ることができなかった。またこれをリホールドして可溶化しても酵素の活性は得られなかった。そこで最近発売されたpCold TFベクターを用いて低温で発現させたところ活性のある酵素を得ることができた。この研究の目的として活性のあるPEPCKを得ることを掲げていたので、目的の達成は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究の最終目的は、GDP-依存性のピルビン酸キナーゼがミトコンドリア内でどの様に基質であるPEPを受け取るのかを解明する事である。最も考えられる事としてはPEPCKがミトコンドリア内で働く事を証明することである。現在活性のあるPEPCKを得ることに成功している。しかし低温での発現のためその発現量は通常の方法に比べ遙かに劣っている。したがって、発現の方法と酵素の精製に関しては今後多くの時間が必要である。酵素活性の詳細な検討を行うために、その必要量を得るための検討が必要である。今後はこのPEPCKの酵素学的な性質を詳細に調べ上げ、我々哺乳類の酵素とどの様に違うのかを明らかにする予定である。 次に行わねばならない事として、抗体を作製してミトコンドリア内での局在を調べる実験が必要である。そのためにはin vitro培養条件下での蛍光抗体法の実施を行う。トキソプラズマ虫体をin vitroで培養するためには宿主細胞の培養が不可欠である。宿主としてはvero細胞のような上皮系の細胞を用いる予定である。トキソプラズマが感染した細胞を固定後、抗体による蛍光染色を行い、ミトトラッカー染色との整合性を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の全ては消耗品の購入に使用する予定である。研究の推進方策で述べたとおり、PEPCKの発現と精製にかなりな時間が必要である。研究費はそのための発現用試薬類、プラスチック器材、精製用の試薬類およびプラスチック器材に使用される。また抗体の作製、宿主細胞の培養に用いられる試薬、実験動物、プラスチック器材に研究費を使用予定である。その他に顕微鏡観察用試薬類、プラスチック用器材に費用を使用予定である。
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Research Products
(3 results)