2012 Fiscal Year Research-status Report
トキソプラズマ原虫に特異的なGTPーPKの基質供給経路の解明
Project/Area Number |
23590494
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浅井 隆志 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30159355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 美穂子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50445201)
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Keywords | トキソプラズマ / GDP-PK / PEPCK |
Research Abstract |
トキソプラズマには GDPを基質とするピルビン酸キナーゼ(GDP-PK)が存在することを我々は発見している。この酵素は解糖系の酵素ではなく、ミトコンドリアとアピコプラストに存在することがその後判明した。我々人類をはじめほとんどの生物はミトコンドリアにピルビン酸キナーゼを持つことはなく、なぜトキソプラズマのミトコンドリアにピルビン酸キナーゼが存在するのかは不明である。アピコプラストの代謝経路ではピルビン酸キナーゼの存在は推測されていて、その系で酵素として機能していると思われる。この研究の目的は、トキソプラズマのミトコンドリアにピルビン酸キナーゼの基質であるホスホエノールピルビン酸(PEP)がどのように供給されるのかを明らかにすることである。 トキソプラズマのミトコンドリアにはPEPのトランスポーターの存在が確認されないことから、ミトコンドリア内でPEPが合成されていることが考えられる。そこで我々は、PEPの合成に関与すると思われるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)について解析を行った。 トキソプラズマには2種類のPEPCKが存在するが、解析の対象であるタキゾイト型虫体からは1種類のPEPCKしか確認されず、もう1種類は発現されていないと考えられる。確認されるPEPCKについてはいろいろな発現ベクター系で遺伝子組換え酵素の作製が試みられた。その結果、pCold TFベクターで低温発現させることに成功した。しかし、酵素学的な解析や抗体の作製といったある程度の酵素量を必要とする精製法の確立にはいたっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PEPCKの遺伝子組換え体(合計2種類)を作製する実験を行った。遺伝子組換え体はPCR法によりトキソプラズマRH株のcDNAより増幅し、発現ベクターであるpGEX系に挿入する方法が考えられた。その理由は、現在まで8種類のトキソプラズマ酵素をpGEX系で発現させているが、その内7種類の酵素は活性のあるものが得られていた。また活性の無い1種類も大量にインクルージョンボデイで発現されており、pGEX系は良い結果をもたらしていた。しかし実際に実験を行ってみると、PEPCKについてはpGEX系は機能せず、全く別の系を試す必要性に迫られた。この点は計画の前進の大きな障害となった。 トキソプラズマには2種類のPEPCKが遺伝子情報として存在する。何度かmRNAを精製してcDNAを作製したが、どのcDNAからも1種類のPEPCKしか確認されず、もう1種類のPEPCKは発現されていないという結論に至った。ただこのことは実験計画の段階で可能性が考えられていたので、実験計画の前進の大きな障害とはなっていない。しかし今後精査が必要となってくるだろう。 上記の結果を踏まえ、いろいろな発現ベクター系を検討した。その結果、pCold TFベクターに遺伝子を挿入して、低温下でPEPCKを発現させたところ、電気泳動ではっきり確認できる量の発現が見られた。また発現されたPEPCKには活性があるらしいことが確認された。しかしハイドロホービッククロマトによる精製はかなり検討が必要で、時間の経過を招いてしまった。 これらの結果を総合すると、現在までの達成度は70%程度と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在PEPCKの発現方法、精製の方法は検討され最適な条件が確認された。しかしPEPCKは酵素活性の測定が非常に困難な酵素である。一般的な酵素活性の測定法でトキソプラズマ酵素の活性を測定可能かどうか不明な点もある。ただ一回の検討では活性らしき数値を測定している。今後はこの点を推進させていく必要が考えられる。 一般的にはPEPCKの遺伝子にはATP-依存型とGTP-依存性の2種類が存在する。現在発現可能なトキソプラズマのPEPCKは多分GTP-依存型と推測されるが確定されていない。今後この点に注意して活性の検討を行っていく。特に基質特異性の検討が重要な研究推進方策である。しかしATP型、GTP型の判別は実験的に難しいことも予想される。そのため、酵素活性が測定できなくても抗体を作製してそのポリペプタイドの細胞内分布を調べる予定である。最終的には、コンピューターによる配列の予想で型を決定することになるかもしれない。 以上のことを総合すると、発現されたPEPCKの精製と酵素活性の検討が最大の研究推進方策である。しかし研究の目的であるGDP-PKの基質供給の解明を考えると、PEPCKの細胞内分布を決定することが必要である
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用は、PEPCKの発現と精製のための試薬類が主になる。発現と精製が当初予定していた方法では解決されず、pCold TFを用いた低温発現により可能となったことから、今年度の予定していた予算を使い切ることができなかった。その他にPEPCKの活性測定のための試薬類と、今年度に予定されていたウサギによる抗体の作製費である。 具体的にはバクテリアの増殖のためのLB-培地、抗生剤とBenzonase,His 60 Ni Buffer set,His・Bind カラムなどの精製に用いる試薬などである。その他にHPLC用のカラムと試薬などにも使用予定である。またPEPCKの測定に用いられる解糖系の各種酵素類とその基質などにも使用予定である。これら薬品類の他には、各種プラスチック容器、チップ、ガラスの容器などに使用予定である。 今年度は研究の最終年にあたるので、報告書の制作費および論文の投稿料に研究費を使用予定であるが、研究予定に遅れがあることから投稿料に関しては未定である。
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Research Products
(5 results)