2011 Fiscal Year Research-status Report
気象病のメカニズムと治療法に関する動物実験と臨床実験による連携研究
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23590710
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 純 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (00235350)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性痛 / うつ病 / 自律神経 / 低温 / 低気圧 |
Research Abstract |
動物実験:(1) 慢性痛モデル(坐骨神経損傷による),抑うつモデル(強制水泳試験による)を作製し、静脈カテーテルを留置し、環境ストレスシミュレータを用いて低温暴露(10℃の冷却)しながら血液の繰り返しサンプリングを行った。自律神経指標として、血中のノルアドレナリン量の変化をHPLCで解析した。健常ラットの変化と比較したところ、両モデルにおいて、安静時の量、低温暴露中の変化に有意な違いが観察された。慢性痛やうつ病病態で低温環境に対する感受性が健常者と異なっている病態メカニズムを探索する上で、重要な知見である。(2) 譲渡により若干数のTRPVファミリーノックアウトマウスを得られたので、来年度の本実験のために予備実験を行った。健常ラットとTRPVファミリーノックマウスに低気圧暴露(大気圧より40 hPa減圧)を行い、自律神経指標である心拍数の変化を自由行動下で観察した。健常ラットでは低気圧曝露中に心拍数の上昇が観察されたが、ノックアウトマウスの一系統では異なった反応様式を示した。この種のTRPVが気圧検出機構に関与する可能性を示した。(3) SDラットを用い腰部交感神経に電極を留置し、自由行動下の交感神経電気活動を連続記録した。坐骨神経損傷により慢性痛病態にしたところ、交感神経活動に一過性の変化がみられた。環境ストレスシミュレーターを用いて低温暴露を行ったところ、健康動物とは異なった反応パターンを示した。臨床実験:(1) 天気依存型の慢性痛患者,抑うつ患者を微少な気圧変化に暴露した。低気圧暴露により疼痛,抑うつ症状が悪化し,自律神経系の反応パターンにおいて健常者と違いが見られた。高気圧暴露では両病態に改善効果がみられた。以上より慢性痛患者と抑うつ患者の気圧変化に対する自律神経系の反応性が健康人と異なっていることが、天気依存型の病態形成に重要な役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、内耳の気圧検出機構を探るために、TRPVノックアウトマウスを用いた実験を平成24年度にスタートする計画であったが、初年度に予備実験を行い、当初予想した通りの結果を得ることが出来た。一方、臨床実験では患者を被験者とした暴露実験によって低気圧暴露に疼痛増強効果があることはおおよそ確定する事が出来た。また高気圧暴露に逆の効果があることも分かってきた。本年度行う計画であった臨床研究、動物実験ともに順調に行われ、予想通りの結果を得ている。特に臨床実験では、低気圧だけでなく高気圧の効果についても成果を得られたことが大きい。動物実験では、当初、内耳の気圧検出機構を探るために、TRPVノックアウトマウスを用いた実験は平成24年度に行う計画であったが、譲渡動物を得られたことから前倒しのかたちで、本年度にパイロット実験を行うことができた。研究結果から、内耳の気圧検出機構にTRPVチャネルが重要な役割を担っていることが明らかになったことは、当初の予想通りの結果であり、来年度の実験に繋がる大きな研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画では、内耳の気圧検出機構を探るために、TRPVノックアウトマウスを用いた実験を平成24年度にスタートする計画であったが、初年度に予備実験を行い、当初予想した通りの結果を得ることが出来た。そこで次年度はターゲットになるTRPVノックアウトマウスの繁殖ラインを確立し、実験動物数を増やし、この検証実験を完了することを目標とする。臨床実験では、低気圧暴露の効果はほぼ確定する事が出来たので、次年度は患者を被験者にして高気圧暴露実験を集中して行い、慢性痛症状、うつ症状に対する改善効果と生理機能に対する効果について解析しメカニズムを探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験:(1) パイロット実験では譲渡を受けたTRPVノックアウトマウスを用いて実験を行ったので、本格的な実験系を組むため、研究者自身でTRPVノックアウトマウスを繁殖し、実験用のラインを確立するために研究費を使用したい。(2) SDラットを用いた交感神経電気活動の実験では、電極の作製費用と動物の購入・長期的な飼育費用に研究費を利用する。(3) ノルアドレナリンの測定実験にはHPLCを利用するので、検出用カラム、薬品などの消耗品費に研究費を利用する。また、動物の購入費、飼育料にあてる。臨床実験:(1)臨床実験には被験者の謝金、各種測定用の電極、使い捨てセンサーなどの消耗品に費用があてられる。
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Research Products
(13 results)