2011 Fiscal Year Research-status Report
新規神経ペプチドAPGWamideの抗アロディニア効果に関する基礎的研究
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23590716
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
池田 哲也 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20264369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西森 利数 宮崎大学, 医学部, 教授 (20112211)
武田 龍一郎 宮崎大学, 医学部, 助教 (90336298)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経因性疼痛 / アロディニア / 下行性抑制系 / セロトニン / 抗うつ薬 |
Research Abstract |
糖尿病性神経因性疼痛モデルラットを作製し、APGWamideおよび、そのC末端フラグメントペプチド、PGWamide、GWamideを髄腔内に投与した。糖尿病ラットは、アロディニア(触刺激による痛み行動)を示すが、いずれのフラグメントペプチドもアロディニアを有為に軽減した。また、その効果はAPGWamideが一番強く、PGWamide、GWamide の順番であった。アロディニアを示すラットは、足への温熱刺激によって、その神経投射部位である脊髄後角にc-Fosタンパクを発現する。このc-Fosの発現は痛みの入力の指標とされており、c-Fosの免疫組織化学を行ったところ、APGWamideの髄腔内投与は、足への温熱刺激によるc-Fosタンパクの発現を抑制した。行動学的実験、組織化学的実験、いずれの実験でも、APGWamideは抗アロディニア作用があることが示された。 この効果が、脊髄における抑制系を介していると考え、APGWamideの作用に対するセロトニン(5-HT)レセプターとノルアドレナリン(NA)レセプターのアンタゴニストの効果を調べた。5-HT1、5-HT2、5-HT3、α1、α2、それぞれのレセプターサブタイプに選択的なアンタゴニストをAPGWamideと同時投与したところ、5-HT1、5-HT3、α1レセプターアンタゴニストが、APGWamideの抗アロディニア作用を抑制することがわかった。 これらの結果から、APGWamideとそのアナログペプチドは、糖尿病性神経因性疼痛に対して抗アロディニア作用を示し、その作用は神経伝達物質である5-HTやNAを介している事が示唆された。さらに、効果のあったアンタゴニストが結合するレセプターサブタイプから、APGWamideの作用には下行性の疼痛抑制系が関与していることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画に沿って研究・実験を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、当初の計画通り、上位中枢(大脳皮質、大脳基底核、扁桃体、視床、中脳水道周囲灰白質、大縫線核、青斑核など)におけるAPGWamideの効果を明らかにする。正常ラットおよび糖尿病ラットの脳室内にAPGWamide類を投与し、アロディニアに対する行動実験を行い中枢作用を調べる。上記の脳部位でc-Fosタンパクの免疫組織化学を行い、痛み入力に応じて発現するc-Fosに対する効果を調べる。(西森) APGWamideの5-HTやNAを介した抗アロディニア作用は抗うつ薬の薬理作用と似ており、脳内への投与でも抗うつ薬と同様に5-HTの放出量が増えることを確認している。このことから、APGWamideには痛みに対する効果だけでなくうつ病に対しても軽減効果があることが期待できる。そこで、APGWamideを脳室内に投与し、行動実験から抗うつ効果を調べる。(池田) APGWamideのC末端アナログペプチドの活性の比較から、N末端のアミノ酸残基が活性の強さに影響を与えていると思われる。そこで、構造活性関係を詳しく調べるために、N末端のアミノ酸残基Alaを他のアミノ酸残基に置換したXPGWamideを作製し、抗アロディニア効果を調べる。さらに、マイクロダイアリシス法でXPGWamide投与後のセロトニン量を経時的に観察し、5-HTをはじめとするモノアミン類の変化を定量的に解析する。APGWamideの作用部位とその脳に与える影響を詳細に検討する。(武田) APGWamideは本来軟体動物から単離されたペプチドであり、哺乳類に効果があるということは哺乳類にも同様な効果を持つ未発見の神経ペプチドが存在する可能性が高い。本年度と次年度にかけて、神経因性疼痛の行動実験をアッセイ系にしてラットの神経系からAPGWamideと同様の活性を持った神経ペプチドの探索を試みる。(池田)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の繰越金と本年度の予算を合わせて1,780千円。前年度の繰り越しは、備品としてロータリーエバポレーターと濃縮遠心機を購入するためで、合わせて1,300千円となる。レセプターアンタゴニスト等の試薬類に100千円、APGWamideアナログペプチドの合成に200千円、学会発表等の旅費に100千円、論文投稿費に80千円を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] A molluscan neuropeptide, APGWamide, shows the antiallodynic effect in the rat model of diabetic neuropathy2011
Author(s)
T. IKEDA, K. IGAWA, Y. ISHIZUKA, T. NAKAMURA, R. NAONO, R. TAKEDA, Y. ISHIDA, T. NISHIMORI
Organizer
Neuroscience 2011 (Sosciety for Neurosciencec)
Place of Presentation
Washington Convention Center (Washington DC)
Year and Date
November 14, 2011
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