2011 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティ・エンパワメントによる高齢者の社会参加型自殺予防の実証研究
Project/Area Number |
23590773
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
藤田 幸司 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40463806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本橋 豊 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10174351)
金子 善博 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344752)
佐々木 久長 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70205855)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コミュニティ・エンパワメント / 自殺予防 / 社会参加 / 地域保健 / ソーシャル・キャピタル / 地域づくり / ヘルスプロモーション |
Research Abstract |
秋田県八峰町において、平成23年12月から24年2月にかけてコミュニティ・エンパワメントの技法を取り入れた積極的な社会参加を促す地域づくり型の介入プログラムを実施した。平成23年1月1日より9月末日までに自殺者の発生したA,B,Cの3自治会において、公民館・集会場を利用し、住民が積極的に集まり地域の問題点と解決策を考える住民主体の集まる場(機会)を各3回設定した。毎回、自殺対策を専門とする研究者が最初に話題提供を行い、その後でグループに分かれワークショップを行った。初回はコミュニティの問題や課題を明らかにすることを課題とし、「自殺を減らすために私たちができること」といった、地域における自殺予防と関連したテーマについて、住民主体で話し合った。2回目は、初回で提示された問題や課題を解決するためにどうすれば良いか、ビジョンを作り上げる(目的や価値観の共有など)ことを課題として、ワークショップを行った。3回目はテーマについて住民主体で、地域のビジョンを検討し、今後の具体的な活動方針を確認した。計3回のプログラム全てに参加したのは、A自治会10名、B自治会12名、C自治会11名であった。初回開始前、および、3回目終了後に簡潔な自記式質問紙調査を実施し、参加者の意識変化を測定した結果、地域から自殺を無くすことが「できると思う」と回答したのは、初回時16名(50.0%)、終了時20名(62.5%)、「できると思わない」は、初回時4名(12.5%)、終了時2名(6.3%)であった。コミュニティ・エンパワメントの技法を取り入れた積極的な社会参加と住民同士の信頼を高める地域づくり型の介入プログラムの実施は、地域のソーシャル・キャピタルを向上や、住民の自己効力感を高め、安心して自殺という深刻な課題に向き合えるようになることで、自殺予防対策において非常に有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コミュニティ・エンパワメントの技法を取り入れた積極的な社会参加を促す地域づくりが地域のソーシャル・キャピタルを強化し、さらには自己効力感の向上や閉じこもり予防を促進するとの仮説を実証することを目的に、秋田県八峰町において介入研究を行うため、まず介入方法・介入プログラムおよび研究計画全体について、行政担当者(福祉保健課)、研究分担者、研究協力者と綿密な検討を行った。町内の49 自治会から、平成23年1月1日より9月末日までに自殺者の発生した地域の3自治会にて、平成23年12月~平成24年2月の土・日・祝日に各3回実施した。具体的には、公民館や集会場を利用し、そこに住民が積極的に集まり地域の問題点と解決策を考える住民主体の集まる場(機会)を設定した。毎回、自殺対策を専門とする研究者が最初に話題提供を行い、その後でグループに分かれワークショップを行った。初回はコミュニティの問題や課題を明らかにすることを課題とし、「自殺を減らすために私たちができること」といった、地域における自殺予防と関連したテーマについて、住民主体で話し合った。2回目は、初回で提示された問題や課題を解決するためにどうすれば良いか、ビジョンを作り上げる(目的や価値観の共有など)ことを課題として、ワークショップを行った。3回目はテーマについて住民主体で、地域のビジョンを検討し、今後の具体的な活動方針を確認した。初回開始前、および、3回目終了後に簡潔な自記式質問紙調査を実施し、参加者の意識変化を測定した。初年度である平成23年度に予定していた介入計画は、概ね予定通り実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、介入実施後の住民のメンタルヘルスとソーシャル・キャピタルの変化や、それに寄与した要因を明らかにすることを目的に、秋田県八峰町において30 歳以上85歳未満の全住民約6,500 人を対象とした自記式による質問紙調査を実施する。調査項目は、基本属性、メンタルヘルス(K6:The Kessler 6-Item Psychological Distress Scale)、閉じこもり(外出頻度)、主観的健康感(健康度自己評価)、疾病状況、通院有無、老研式活動能力指標(TMIG Index of Competence)、移動能力、外出に対する自信の程度、外出機会の増加希望有無、体力、友人関係、地域活動やボランティア活動への参加およびソーシャルネットワーク、自己効力感、ソーシャル・キャピタルなどである。平成25年度は、平成24 年度の調査データについて、申請者らが平成20 年および平成22 年に秋田県八峰町の30 歳以上の住民を対象に実施した悉皆調査のデータとの突き合わせを行い、多重ロジスティック回帰分析や比例ハザード分析などの多変量解析により、コミュニティ・エンパワメントの技法を取り入れた積極的な社会参加をうながす地域づくり型介入の効果を実証する。介入の主要評価項目は高齢者の自己効力感と抑うつ傾向の改善、副次的評価項目は地域のソーシャル・キャピタルの改善と地域住民の抑うつ傾向の改善である。さらに、コミュニティ・エンパワメントの技法を取り入れた地域づくり、社会参加型の介入が、地域のソーシャル・キャピタル向上、住民の自己効力感の向上、閉じこもりの予防・解消に対する有効性について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は東日本大震災の影響により、研究実施地域での研究打ち合わせの実施を想定していた回数実施できなかったこと、および、途中から分担研究者を追加したことにより、分担研究者が配分した研究費を使用できる期間が短かったため次年度に使用する研究費が生じた。平成24年度は、研究費を質問紙を用いた悉皆調査および研究成果発表旅費として使用する。調査実施に係る経費は、調査票印刷費、データ入力費、結果をまとめた住民向けパンプレット作成および配布費用である。研究成果発表旅費としては、国内学会(日本公衆衛生学会,日本疫学会)および国際学会(アメリカ老年学会)を予定している。
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